読んだ本 感想メモ

研究とは全く関係ありません。ただの感想です。最近読んだものは上に継ぎ足しています(概ね古いものが下)。そのときどきでマイブームがあります。

  1. 「天才作戦家マンシュタイン」 大木毅 角川新書
  2. 「ゴールデンボーイ」 スティーヴン・キング 新潮文庫

    「刑務所のリタ・ヘイワース」と「ゴールデンボーイ」が収録されている。「刑務所のリタ・ヘイワース」は映画「ショーシャンクの空に」の原作。結末が分かっているので安心して読めた。映画を見た人ならわかるように読後感が爽やかな作品である。「ゴールデンボーイ」の方は全く事前情報なし読んだのだが、かなりショッキングな物語だった。

    感想つづき(ネタバレ注意)

    何の挫折も知らない恵まれた、まさにゴールデンボーイと呼んでいい、13歳の白人少年がひょんなことからナチスのユダヤ人虐殺について興味を持つようになり、さらに偶然、身分を隠して暮らしている元ナチの絶滅収容所の所長を町で見つけてしまうところから物語は始まる。好奇心と自惚れから少年は、そのかつて収容所所長だった老人と会い、話を聞くうちに精神が蝕まれていくというストーリー。超常現象は全く出てこないが、ひょっとしたらあり得るかもしれないという戦慄がある。出版元からこの話だけ外せないかと言われたのもよく分かる。怖い。

  3. 「室町無頼(上)(下)」 垣根 涼介 新潮文庫

    室町時代が舞台の小説。映画のことを知り、まずは原作ということで読んでみた。面白くて先が気になって週末に上下巻を一気に読んでしまった。舞台は、応仁の乱が起きる少し前の京都。農村では飢饉が毎年のように起き、貧民が京に溢れ死体が山を築いている。土倉(金貸し)は百姓に高利で金を貸し暴利をむさぼっている。金が返せなくなった百姓は田畑を捨て飢民として京に流れ込む。そんな地獄のような世で、日々を必死に生きている天涯孤独の少年、才蔵の成長を軸に物語は展開する。

    感想つづき(ネタバレ注意)

    落ちぶれた赤松牢人の子として村の厄介者になり、村の片隅で生きるしかなかった才蔵は、己の力しか頼るものがなかった。天秤棒を担ぎ、京に薪を運び売るうちに、いつしか六尺棒の使い手になる。才蔵は、ならず者の頭目でありながら京都の警護職にある骨川道賢に、謎の牢人蓮田兵衛に見込まれ、運命が大きく変わっていく。兵衛の知り合いの六尺棒の達人に預けられ、10ヶ月の修行ののち兵法者として覚醒する。この修業シーンは、悟空と亀仙人、ジャッキーチェンと老師、ベスト・キッドのミヤギさん、を思い出させるが、修行の内容はそのどれよりも過酷で、下手をすると(というか普通は)死ぬ。死なずに済んだのは、ひとえに才蔵の持って生まれた才能ゆえである。

    才蔵が無双になっていく部分は、まさにエンターテインメント性抜群なのだが、実はこの物語の真の主人公は別にいる。蓮田兵衛という牢人である。兵衛は老師匠に言わせると鵺(ぬえ)のような人物。すなわち善悪の彼岸に生きている。愛想はいいが、謎が多く何を考えているか分からない。剣の達人であり、刀の切り口の見事さから京でも3人はいないといわせる腕前である。百姓のために無償でいろいろな交渉に骨を折ってくれるが、一方で関所の役人を問答無用で切り殺して火をつけたりして容赦がない。要するに社会秩序の破壊者である。

    兵衛の描き方も工夫されていて、才蔵、道賢、遊女の芳王子(ほおうじ)、金貸しの僧兵頭・暁信の視点からの描写はあるが、兵衛視点の描写はない。そのため兵衛が何を考えているのか謎である。

    物語後半で兵衛の目的が明らかとなる。大乱を引き起こそうとしているのである。それまでの人脈の構築も、百姓のための交渉も、才蔵を六尺棒の達人に鍛え上げたのも、京に未曽有の一揆を起こさんがためであった。全ては兵衛が描いた絵の中で動いていたことが分かる。兵衛の一揆は単に百姓のためではない。機能不全を起こしている室町幕府の秩序を下から破壊すること。この物語は、応仁の乱がおこる直前であることを読者は知っている。じきに京が戦乱の舞台となり戦国時代が始まることを。兵衛はまるで自らが来る時代の魁となることを知っているかのように戦い続ける。一揆勢を指揮し巧みな作戦で2度勝利するが、最後は道賢に打たれる。そして、後年、道賢もまた兵衛の遺志を継いだかの如く応仁の乱で暴れ命尽きるのである。

  4. 「魔性の子 十二国記 0」 小野不由美 新潮文庫
  5. 「リリエンタールの末裔」 上田早夕里 ハヤカワ文庫

    「華竜の宮」に続き上田早夕里作品を読んでみた。短編集。冒頭の短編「リリエンタールの末裔」はオーシャンクロニクルもの。タイトルのリリエンタールが示す通り、飛ぶことへの情熱が主題になっている。「マグネフィオ」と「ナイト・ブルーの記憶」は、陽には書いていないが、オーシャンクロニクルの大異変前の世界と捉えられなくもない作品。

  6. 「ファンタジーと言葉」 アーシュラ・K.ル=グウィン 青木由紀子訳 岩波書店

    ル=グウィンが書いたエッセイを集めたもの。創作、ファンタジー、文化、言葉、ジェンダー、幼少期、読むことなど諸々のことついてのル=グウィンの思想が語られる。なかなか辛辣な意見が多いが、彼女が何を考えて作品を書いてきたのかがよく分かる。書くとは何なのか。物語のアイデアはどこからくるのか。ル=グウィンは人物が現れ、動き出すのを「待つ」のだそうだ。脳内の意識下の力。物語を書くという行為はまさに芸術に他ならない。ノンフィクションがもてはやされる風潮の中で人間にとってのフィクションの意味を追求する。つまるところ人は物語が好きなのだ。何千年いや何万年もの間。人類が言語を獲得して以来ずっとだ。物語を作り、物語を欲するのは本能のようなものだ。いろいろな作品や作家を取り上げ、ル=グウィンの考えが述べられていて興味が尽きない。マーク・トウェイン、「指輪物語」、トルストイ、ヴァージニア・ウルフ、ディケンズ、「フランケンシュタインの怪物」、「眠り姫」...

  7. 「新宿鮫」 大沢在昌 光文社文庫

    だいぶ昔の警察小説。舘ひろし主演でドラマ化もされていたのを思い出す(見てないけど)。エンターテインメントでありながら、嘘くさくならない絶妙のバランス。主人公、鮫島だけではなく、存在感のある脇役が物語を支えている。タイトルの新宿鮫という漢字のネーミングがいい。新宿鮫シリーズ、12巻まで出ているらしい。いつ読み終わるか分からないけど焦る必要もない。のんびり読んでいこう。

  8. 「「めんどくさい」が消える脳の使い方」 菅原洋平 ディスカヴァー・トゥエンティワン

    ついつい面倒くさいと感じ、いろんなことを後回しにしてしまう。何とかならないかと思う。この本は、精神論ではなく、脳の特性から解決法を提示しているのが素晴らしい。いくつか大事な点を挙げると、脳はシングルタスクでしか動作しない。マルチタスク、要するに「ながら」は今すぐ止めるべき。あと、多量の情報を処理しすぎると脳は疲れて「めんどくさい」と感じやすくなる。なので、息抜きと思ってSNSの投稿を眺めてすごすと大量のしかも関連性のない情報処理に脳が疲れてしまって本当にやりたいことができなくなる(全然脳の休息になっていない)。また、予測のつかない物事に対して脳はあまりやりたがらない。目標を高くしすぎても「構えて」しまって動かなくなる。習慣的な身体動作がトリガーとなってサボっている場合がある。そういう場合はあまり深く考えず動いてみる。立ち上がる。余計なことを考えず目の前の作業に集中する。

  9. 「華竜の宮(上)(下)」 上田早夕里 ハヤカワ文庫

    近所の本屋で、上田早夕里という作家を知った。オーシャンクロニクルというSFシリーズを書いていると知り、シリーズ第一作「華竜の宮」を読んでみた。物語の設定は地殻変動による260mの海面上昇により世界が一変してしまった25世紀。世界の多くの土地が水没してしまった。日本も高地のみが陸地として残り、「日本諸島」になってしまった。多くの人類が陸に住めなくなり、遺伝子改変した「海上民」として海の上で暮らしている。陸地に住み続け文明を維持する「陸上民」と、なかば自然と共生しながら暮らす海上民、そのあいだに摩擦は絶えない。滅びの縁に立っても国同士のパワーゲームはなくならない。日本政府の外交官・青澄誠司と海上民のオサ・ツキソメを中心に物語が展開する。語り手は、青澄のアシスタントAI・マキになっていて物語の展開を面白くしている(ツキソメを描くときは彼女自身が語り部になるが)。他にもたくさんの魅力的な人物が登場する。人物がとても丁寧に描かれている。個人的には、中華系海上民の緑子(ジェイド)、ツェン・タイフォンがよかった。テーマとしては暗いのだが、その中で一生懸命に逞しく生きる人々の姿には暗さだけではない明るさや希望も感じた。

  10. 「針の眼」 ケン・フォレット ハヤカワ文庫

    第2次世界大戦が舞台のスパイスリラー。1978年に書かれベストセラーになった。ケン・フォレットはこの小説で人気作家の仲間入りを果たした。ドナルド・サザーランド主演で映画もになっている(1981年)。昔、テレビで放映した時(日曜洋画劇場だったような)、映画は見たのだが、肝心の原作を読んでいなかった。とにかく映画はあまり評価が高くなかった記憶がある(実はなんかいまいちで途中で見るのをやめた)。だが、原作を読んでみると面白い。ベストセラーになったのもうなずける。主人公のドイツスパイは映画よりももっと複雑な人物である。優秀で冷酷なスパイだが、人を殺した後は嘔吐したり(無意識下で殺しを嫌っているのだろう)、スキレットを使ったきれいな殺しを好むとか(血が嫌い?)、女性には甘いところがあったり、完全には冷酷になれない人間臭さがある。最後は女性への甘さが破滅の原因となる。その人物造型が面白かった。また、ノルマンディー前夜の情報戦であり、ドイツ側の場面描写にヒトラーだけではなく、ロンメル、マンシュタイン、グデーリアンなどが登場して、歴史好きにはたまらない。総じて、映画よりも原作小説の方が断然面白かった。

  11. 「一杯のおいしい紅茶」 ジョージ・オーウェル 中公文庫

    「動物農場」とか「1984年」などで知られるジョージ・オーウェルが書いたエッセイ集。ディストピアではなく、生活のごくごく些細なことについて語るオーウェルが新鮮。紅茶を美味しく入れるにはどうすればいいか、イギリス料理にだって旨いものはある、理想のパブはどんなところか、家庭には暖炉が必要だ、などなど。また、書くことの意味とか、文筆業で生計は立てられるのかとか、作家ならではの話も面白い。

  12. 「反知性主義」 森本あんり 新潮選書

    反知性主義、最近新聞などで見るようになったが、だいたい悪い意味で使われる。私も最初に聞いたときはなんだそりゃ、主義として意味不明だなと思った。しかし、本書を読んでよく分かったが、もともと反知性主義とは肯定的な意味で使われていたということ。これを理解するにはアメリカという国が高学歴者のエリートが治める極端な知性主義だということを理解していないといけない。反知性主義はそのエリート支配に対する反乱なのである。つまり、反知性主義はアメリカの民主主義を成り立たせる大事な一要素となっている。本書は、反知性主義の源流ともいうべきリバイバル運動(信仰復興運動と訳される)に焦点を当て、その歴史から解説する。最初のリバイバル運動は植民地時代の18世紀のアメリカにまで遡る。リバイバルは大勢の民衆が宗教的に覚醒する現象であり、教会の知的エリートではなく辻説法をする伝道師たちにより起こされた。この本を読むとアメリカの別の側面が見えてくる。現在アメリカで起きていること、なぜ、ドナルド・トランプが大統領になったのか、その社会構造や文化的背景が分かるような気がする。下のサンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」も併せて読むとその思いが強くなる。

  13. 「ビタミンF」 重松清 新潮文庫

    重松清の小説を初めて読んだ。短編集。7編の短編が収められている。タイトルのFは、作者あとがきによるとFamiliy, Father, Friend, Fight, Fragile, Fortuneということらしい。どの短編も主人公は家族を持つ40代くらいの男だ。人生の中盤に入り生活が落ち着き始めたところで、家庭内の深刻な問題に直面する。経済的な問題ではない。妻や子との関係性の問題だ。直面する問題は、深刻だが珍しいものではない。身近に起こりうる問題だ。若い頃にこの本を読んでもあまり感じるものはなかったかもしれない。家族を持つようになった中年の親父になった今だからこそ分かるような気がする。子供との関係はずっと同じではない。子供は成長し自分は老いる。家族だからといって考えていることが全て分かるわけではない。物語の中の男たちは悩み、狼狽え、そして最後になんとか解決のようなものを見出す。心のビタミンになるようにとタイトルが付けられただけあって、最後は元気を与えてくれる。

  14. 「実力も運のうち 能力主義は正義か?」 マイケル・サンデル ハヤカワ文庫
  15. 「三体 Ⅱ 黒暗森林 上 下」 劉慈欣 ハヤカワ文庫
  16. 「三体」 劉慈欣 ハヤカワ文庫
  17. 「キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ」 長月天音 角川文庫
  18. 「銃・病原菌・鉄 (上)(下)」 ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫
  19. 「作家刑事毒島」 中山七里 幻冬舎文庫
  20. 「意識はいつ生まれるのか」 ジュリオ・トノーニ, マルチェッロ・マッスィミーニ 亜紀書房
  21. 「AX アックス」 伊坂幸太郎 角川文庫
  22. 「友だち幻想」 菅野仁 ちくまプリマー新書
  23. 「リボルバー」 原田マハ 幻冬舎
  24. 「ボッチだった6ヶ月間 (とその後)」 都会 角川

  25. 「グラスホッパー」 伊坂幸太郎 角川文庫

  26. 「大聖堂 上」 ケン・フォレット ソフトバンク文庫

  27. 「ザリガニの鳴くところ」 ディーリア・オーエンズ ハヤカワ文庫

    ○○小説とジャンルで簡単に括れない作品。殺人事件をめぐる物語なのでミステリとも言えるが、単純にミステリと言い切ってしまうとこの小説の何か大事な部分が失われてしまうような気がする。町の人間から「湿地の少女」(marsh girl)と渾名され蔑まれる孤独な少女カイア。彼女の人生と平和な田舎町に起きた殺人事件が交錯する。なんとも言えない読後感。余韻が残る。舞台がノースカロライナなので、昔住んでいた身としては知っている地名がたくさん出てきてとても親近感が湧いた。

    感想つづき(ネタバレ注意)

    衝撃のラストで無名の詩人アマンダ・ハミルトンがカイア自身だということが明らかになり、その詩からカイアが殺人に関わっていたことが分かる。アマンダの詩は作中で要所要所で登場する。逆に詩に着目して読み直してみるとアマンダの詩はカイア自身の言葉だったことが分かる。特にジャンピンにチェイスが死んだことを聞かされたあとに諳んじる詩が意味深である。「心を軽く見てはならない 頭では想像もつかぬことを人はできてしまうのだ」 この詩は犯行を暗示している。

    犯人は、カイアか、ジャンピンか、テイトの誰かだろうと思っていたので最後の謎解きでカイアが犯人と分かってもそれほど衝撃は感じなかった。しかし、不可解だったのは人を殺したにしてはカイアに罪悪感がないことだ。拘留後はカイア視点の描写がメインになるが、明らかに拘留を不当に感じている。共感性が欠如したサイコパスかというとそういうわけでもない。人並みに(というかそれ以上に)愛情を持った人間だ。これを理解する鍵になるのはやはり「湿地」だろう。彼女の規範は人間社会ではない。湿地が彼女のルールだ。湿地から全てを学んだ。雌の蛍が明滅して別種の蛍の雄をおびき寄せ食べてしまう光景を見て、「ここには善悪の判断など無用だということを、カイアは知っていた」とある。また、チェイスに暴行を受けて隠れ家にいるときにカマキリのメスが交尾の最中に雄を食べてしまう。「昆虫の雌たちは恋の相手とどう付き合うべきか、ちゃんと心得ているのだ、とカイアは思った」 ここでカイアの中に犯行の意思が芽生えたのだと思う。湿地の生き物から学んだことを実行に移したまでで罪悪感などあろうはずもない。

    ここで冒頭の書き出しに戻る。湿地には湿地の法があるという。生き延びるための本能だという。道徳の問題ではないという。そういう意味でチェイスは湿地に裁かれたのだろう。やはりカイアはどこまで行っても「湿地の少女」だった。

  28. 「ハーモニー」 伊藤計劃 ハヤカワ文庫

  29. 「東亰異聞」 小野不由美 新潮文庫

  30. 「操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか」 ジェイミー・バートレット 草思社

  31. 「キッチン常夜灯」 長月天音 角川文庫

    ほのぼの癒し系の物語。都心の表通りから一本入った裏通り。マンションが建ち並ぶ閑静な住宅街。そこにひっそりと洋食屋「キッチン常夜灯」はある。深夜から朝7時まで空いてるビストロ。様々な人が訪れては癒やされて次の日の力を得て帰っていく。「深夜食堂」フレンチ版だ、これは。予定調和的でみんながハッピーエンドになることは分かっているが、それがいい。いろんな事情の人が登場するが、ひょんなことから常夜灯の常連になった主人公 南雲みもざの人間的成長がメインストーリーに据えられている。

  32. 「マリアビートル」 伊坂幸太郎 角川文庫

    殺し屋たちが繰り広げる物語。作中の裏社会では業者と呼ばれている。東京発 盛岡行の東北新幹線「はやて」に何人もの業者が偶然乗り合わせる。個性的なキャラクター、新幹線という密室、全く予測ができない展開、盛岡までというタイムリミットが、疾走感を生み出す。先が気になって一気に読んでしまった。最後のどんでん返しといい、最高のエンターテイメント。

  33. 「コンビニ人間」 村田沙耶香 文春文庫

    タイトルにインパクトがあり、前から気になっていたが、やっと読んだ。主人公の女性はおそらく発達障害で子供のころから人間関係を築くことに苦労してきた。大学生になってからコンビニ店員をやることで普通を装う術を覚え、そのまま18年間コンビニアルバイトをやっているという設定。コンビニバイトこそ彼女に普通の生き方を教えてくれた存在であり、コンビニに人生をささげている。結局、「普通」とは何かを問う作品。

  34. 「ワインの科学」 清水健一 講談社ブルーバックス

  35. 「虐殺器官」 伊藤計劃 ハヤカワ文庫

    伊藤計劃という作家は名前しか知らなかったが、読んでみたらすごく面白かった。グロテスクなタイトルで手に取るのを躊躇していたが、読んでみると先が気になって一気に読んでしまった。タイトルの虐殺器官、全く予想外のものだった。

  36. 「どくとるマンボウ航海記」 北杜夫 新潮文庫

  37. 「もものかんづめ」 さくらももこ 集英社文庫

    漫画ちびまる子ちゃんの作者、さくらももこのエッセイ。さくらももこは名エッセイストとしての顔も持っているが、1991年に出版されたこの本が初のエッセイ集。ベストセラーになった。内容は基本的に彼女の周りで起きた可笑しい話だが、その中に彼女一流の鋭い視点があって考えさせられる。

  38. 「悪党たちの大英帝国」 君塚直隆 新潮選書

  39. 「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」 中島聡 文響社

  40. 「アンガーマネジメント入門」 安藤俊介 朝日文庫

  41. 「物語 フランス革命」 安達正勝 中公新書

    フランス革命はやっぱり面白い。フランス革命は登場人物の多い、いわば群像劇的なところが魅力。最近の研究でルイ16世も再評価されてきて、これまで言われてきたような暗君ではなく世が世なら名君になっていた可能性もある優れた啓蒙君主だったという話は面白かった。

  42. 「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 三宅香帆 集英社新書

     明治以降の日本人と読書の関係を辿りながら、そこには労働環境の変遷が強く現れている。読書の位置づけも「修養」→「娯楽」と来て、今は「ノイズ」か。本書で言うようにそのノイズを楽しむのが読書。

  43. 「古代アテネ旅行ガイド」 フィリップ・マティザック 安原和見訳 ちくま学芸文庫

    観光ガイドの形をとった古代アテネの解説本。読者は、テルモピュライ、デルフォイ、アテネと旅をし、そしてアテネ市内をめぐる。風俗や見どころなどが紹介される。広場でソクラテスにつかまると面倒くさいから気を付けた方がいいという忠告が面白い。ようするにソクラテスは古代の論破王か。

  44. 「アーロン収容所」 会田雄次 中公新書

    著者はルネッサンス史を専門とする歴史家。戦中、学徒動員され一兵卒としてビルマに送られた。激戦の中、奇跡的に生き残り、武装解除後、捕虜としてラングーン(現ヤンゴン)の収容所で2年過ごし日本に帰国。そのアーロン収容所での体験を綴ったのが本書。本書は単なる捕虜体験記の枠を超えている。それはとりもなおさず会田雄次という鋭い観察眼を持った歴史家が自ら体験したことに基づいて考察したからに他ならない。書斎の中での思索で得られたものとは全く違う生々しい体験。書物の中で知っているつもりになっていた西洋文明というものの真の姿を捕虜という立場になって始めて垣間見た、それが本書執筆の動機となっている。収容所という異常な環境の中でイギリス人と日本人の思考法の根っこの部分での本質的な違いが明らかになっていく。

  45. 「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」 高野 史緒 ハヤカワ文庫

    本屋で平積みになっていてタイトルのツェッペリンに惹かれて買った。飛行船好きとしてはツェッペリンというワードは無視できない。全く前知識なしで読んだが、ツェッペリン飛行船と量子力学を結びつけるアイデアは斬新だと思った。描写は、新海誠か細田守あたりのキャラを思い浮かべながら読むとピッタリくる。読後感も新海誠監督の「君の名は。」を感じさせる。

  46. 「霜の朝」 藤沢周平 新潮文庫

     久しぶりに藤沢周平を読んだ。やっぱりいい。短編集。海坂藩の侍の話は少なくて江戸の町民が主役の話がメイン。派手な剣戟はないが、それはそれでいい。

  47. 「物語 バルト三国の歴史」 志摩園子 中公新書

     エストニア、ラトビア、リトアニアの歴史。バルト海東岸は東西交易路上にあって中世から重要な地域。故に土着の民は常にバルト海の覇権争いに翻弄された。

  48. 「紙の動物園(ケン・リュウ短篇傑作集1)」 ケン・リュウ ハヤカワ文庫

    中国系作家の書いたSFは初めて読んだ。たまたま本屋で気になって買った。短編集第1巻。ケン リュウは中国生まれだが、8歳でアメリカに移住してハーバードを出て弁護士になったり、プログラマーをやったりという経歴の人。収録されている作品はSFというより、どちらかと言うとファンタジー。中国文化が作品のアイデアに生かされています。作者の境遇を反映してか、中国とアメリカのはざまでの葛藤が、またはアジア人的思考と西洋合理主義の対比が描かれる。表題作の「紙の動物園」は、ネビュラ賞、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞の3賞を受賞しているだけあって、いい。最後の「文字占い師」は、読後感がとても重かった。

  49. 「李陵・山月記」 中島敦 新潮文庫

    山月記は、高校の国語の教科書に載っていて印象深い作品だった。中島敦のそれ以外の作品は読んだことがなかったので、今回読んでみた。本書には「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」の四篇が収められている。どれも中国の古典をベースにしているので言葉が難しい。巻末の注釈がなければ読めなかっただろう。でも、印象に残る作品ばかり。

  50. 「サリンジャー: 伝説の半生、謎の隠遁生活」 森川展男 中公新書

     結局、サリンジャーに対する一番の興味って、なぜ彼は世間から姿を消したのかという疑問に尽きる。この本はその隠遁の謎について挑んだもの。本人が口を閉ざしている以上、本当のところは分からないし、導かれる結論もあっと驚くようなものではないが、作品に基づく考察は面白かった。インチキ(phony)な世界に対する無垢(innocent)な存在というのが重要な鍵となる。
     しかし、映画「フィールド・オブ・ドリームス」がサリンジャーと関係があったとは知らなかった。正確に言うと原作小説の「シューレス・ジョー」がサリンジャーを真っ向から取り扱っているらしい。映画では架空の作家に置き換えられている。
     サリンジャーの死後、いろいろな資料が発掘されて詳しい評伝が出ているが、この本が書かれたのはまだサリンジャーが生きていた90年代。それらの研究成果を反映していない。サリンジャーマニアのスラウェンスキーが書いた「サリンジャー 生涯91年の真実」という本が決定版らしい。今度買って読んでみよう。

  51. 「フラニーとズーイ」 J. D. サリンジャー 新潮文庫

    サリンジャーだけあって一筋縄でいかない小説。基本、会話が主体の小説だが、いつ果てるともしれない議論にイライラしたりする。でも、読後感は悪くない。とはいえ、正直なところよく分からなかった。2回3回読まないと分からないんだろう。ちなみに訳は村上春樹の新訳版。

  52. 「人類の起源」 篠田謙一 中公新書

  53. 「闇の左手」 アーシュラ・K・ル=グウィン 小尾芙佐 ハヤカワ文庫

    「ゲド戦記」の作者、アーシュラ・K・ル=グィンの書いたSFの傑作。この不朽の名作を前々から読みたいと思いながら手を出せずにいたが、やっと読んだ。「闇の左手」は単なるSFにとどまらない多様な側面を持っているが、まず特筆されるのはル=グィンが創り出したゲセン人という両性具有の人々だろう。これは、ジェンダーがなかったらどんな社会になるのか、というル=グィンの思考実験でもある。ル=グィンはゲセン人社会を、時に地球人ゲンリー・アイの目を通して、時にゲセン人の宰相の目を通して、そして、途中途中にゲセン人の民話や神話を差し挟みながら、重厚な筆致で描き出す。ここには明らかに文化人類学者だったル=グィンの父の影響が見て取れる。「精霊の守り人」シリーズの上橋菜穂子も文化人類学者だから、文化人類学的視点がいかに架空世界の構築にリアリティを与えるかが分かる。

  54. 「Carver's dozen」 レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳 中公文庫

     レイモンド・カーヴァーという作家は全く知らず、5年前にブックオフオンラインでなんとなく買った本。村上春樹の訳、何だこのタイトルと思ったのを覚えている。その後、本棚の奥ですっかり忘れ去られていた。数年前に国際線の飛行機の中で見た「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」という映画の中の劇中劇がカーヴァーの作品で、そういえば、と買った本のことを思い出し、カーヴァーという作家が自分の中でつながった。今回、やっとこの本を読んだわけだけどとてもよかった。短編ごとについている村上春樹の解説もよかった。

  55. 「メルニボネの皇子」 マイケル・ムアコック 井辻朱美訳 ハヤカワ文庫

     「メルニボネの皇子」と「真珠の砦」が収録

  56. 「オリバー・ツイスト(上)(下)」 チャールズ・ディケンズ 新潮文庫

     前半、孤児オリバーがこれでもかと過酷な状況に陥るのが辛かった。皮肉とユーモアを交えながら周辺人物を細部まで描く。不思議と善人より悪党のほうが人間的に面白い。悪党の描写になるとディケンズの筆が乗りまくる。

  57. 「ろまん燈籠」 太宰治 新潮文庫

  58. 「本は眺めたり触ったりが楽しい」 青山南 ちくま文庫

     SNSで話題だったので買って読んでみた。面白い。積ん読も拾い読みも立派な読書なのか。本棚に未読の本だらけの身としては勇気づけられる。エッセイなのに最後に索引がついているのは、読者が拾い読みできるようにとの著者の配慮か。

  59. 「人間失格」太宰治 新潮文庫

     とても痛々しい苦しみに満ちた人生。架空の話ではなく太宰の経験が元になっているからなおさらつらい。太宰は人間失格の連載第1回が雑誌に掲載されてまもなく死んだ。

  60. 「近代日本暗殺史」筒井清忠 PHP新書

  61. 「縄文 土器・土偶」井口直司 角川ソフィア文庫

     最近、日本の古代にはまっている。縄文土器。現代日本人と隔絶したデザインといい、妖しさといい、実用性を全く無視した装飾といい、意味の不明さ具合がとてもいい。かなり高度な粘土加工。土器づくりの技術が高かったことが分かる。

  62. 「縄文vs. 弥生」 設楽博己 ちくま新書

     とても面白かった。縄文の人々の暮らしを科学的な証拠に基づいて描き出している。炭素14の年代測定は有名だが、ストロンチウムの同位体比から食べていたのが海のものか山のものかが分かるのか。土器に残った小さな圧痕から米か雑穀かも分かるそうだ。すごい。

  63. 「古代史のテクノロジー 日本の基礎はこうしてつくられた」 長野正孝 PHP新書

  64. 「どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか」 みうらじゅん、リリー・フランキー 新潮文庫

     二人のしよもない話の中に深いものがある。こんなんでいいのかと読んでいると気が楽になる。

  65. 「精神の生態学へ 上」 グレゴリー・ベイトソン 岩波文庫

     正直半分も理解できてないけど面白かった。この人すごい。今なら人工知能の話とかにも繋がる内容だ。あまりに先駆的過ぎて大学に職が無かったのもよく分かる。要するに社会というのは心と心の相互作用によって成り立っているシステムなのであり、そのシステムを支配する一般的な法則を探そうというのが著者のやりたいことだと分かった。そういう意味で自然現象を記述する方程式を探そうという物理学者の営みと同じ。比喩として工学的なシステムが頻繁に出てくる。

  66. 「ハーバード式「超」効率仕事術」 ロバート・C・ポーゼン 関美和 訳 早川書房

  67. 「スタンド・バイ・ミー」スティーヴン・キング 山田順子訳 新潮文庫

     表題作と「マンハッタン奇譚クラブ」が収められている。スタンド・バイ・ミーの方は映画を見ていたのであらすじは分かっていたが、読後感は映画とはだいぶ違った。マンハッタンの方は全く予備知識なしで読んだのでどこに向かうか分からず楽しめた。
     キング自身の端書きも掲載されていて面白い。この本は短編にしては長すぎるが長編とするには短すぎる「中編」4つを集めたものらしい。物語を春夏秋冬と並べ、タイトルをDifferent Seasonsとした。邦題の副題が「恐怖の四季」となっているのは端書きのキングと編集者のやり取りを受けての訳者の洒落か?
     訳者があとがきに書いているが、日本語訳の出版がちょうど映画の公開に重なったため、スタンド・バイ・ミーを本のタイトルとしたようだ。長さの関係で邦訳では秋冬と春夏で2冊に分けたことも書かれている。ちなみに春に相当する「刑務所のリタ・ヘイワース」は映画「ショーシャンクの空に」の原作。

  68. 「理想の職場マネージメント~一軍監督の仕事~」高津臣吾 光文社新書

    野球ファンというわけではないけれどプロ野球の監督が書いた本って好きなんですよ。勉強になるから。組織運営とか、人材育成とか、ヒントになることが書いてある。昔読んだ「野村ノート」も面白かった。しかし、Amazonの書評はボロクソに書かれているな。スポーツの監督は外野からやいやい言われる。いちいち気にしていたら始まらない。結果で示すしかないのがプロの世界。

  69. 「物語 アメリカの歴史」猿谷要 中公新書

    単なる解説ではなく、猿谷要先生の米に対する想いが伝わってきた。現代の視点から見れば、アメリカの歴史はその始まりから称賛できるようなものではなく、インディアンや黒人奴隷といった闇を伴ったものであった。その歴史の激しさは日本人にはちょっと想像できないものである。闇の歴史遺産を抱えながらも自らを告発し変わろうとするのがアメリカの民主主義の唯一の救いである。

  70. 「罪と罰 下」フョードル・ドストエフスキー 工藤精一郎 訳 新潮文庫

  71. 「罪と罰 上」フョードル・ドストエフスキー 工藤精一郎 訳 新潮文庫

  72. 「海流のなかの島々 下」アーネスト・ヘミングウェイ 新潮文庫

  73. 「海流のなかの島々 上」アーネスト・ヘミングウェイ 新潮文庫

  74. 「カラマーゾフの兄弟 5」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

  75. 「カラマーゾフの兄弟 4」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

  76. 「カラマーゾフの兄弟 3」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

  77. 「カラマーゾフの兄弟 2」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

    イワンの「大審問官」とゾシマ長老の教えが、この巻の中心。

  78. 「タモリ学」戸部田誠 文庫ぎんが堂

    タモリというのは、単に芸人と呼ぶにはなにか違う。タモリとは「なりすまし」とは言い得て妙。

  79. 「ロシア革命史 社会思想史的研究」猪木正道 角川ソフィア文庫

    単なる歴史の流れではなく、なぜ、ロシアで革命が起きたのか、レーニンの思想的転換とはどこにあったのか、といったことが分かった。

  80. 「カラマーゾフの兄弟 1」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

    再読。さすがに2度目になるとあらすじが分かっているので登場人物たちの台詞や行動の重要性が分かる。

  81. 「カラマーゾフの兄弟 4」フョードル・ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫

    何年も前(10年以上前か)に読みかけになっていた4巻を読む。真犯人が分かったところで読むのをやめてしまっていた。もう、登場人物のこととか、ここまでのいろいろな事件をすっかり忘れてしまってよく分からなくなっている。最終巻の5巻「エピローグ」を読む前にもう一度1巻から読み直さないとだめか。

  82. 「物語ウクライナの歴史」黒川祐次 中公新書

    ロシア史の一部として扱われる事物をウクライナの観点から見るとこうも違うものかと認識させられる。広大な辺境に逃れて自由を求めた人々がコサックとなったわけで非常に興味深い。限られた島国の中に住んでいる日本人とは全く違う感覚があると思う。また、ウクライナの中でドニエプル川というのが重要な境界となっており、右岸と左岸では違う文化が育った。

  83. 「ロシア・ロマノフ王朝の大地」 土肥恒之 講談社学術文庫 興亡の世界史

    この講談社学術文庫の興亡の世界史シリーズ、切り口がなかなかいい。

  84. 「新選組始末記」子母澤寛 中公文庫

    新選組ものの小説とかに多大な影響を与えた古典。司馬遼太郎の「新選組血風録」とかのエピソードもたくさん出てくる。ああ、あの元ネタはこれかというのが分かる。まだ新選組を直接知っていた人が生きていた時代に聞き込みして書かれた本なので結構生々しい。

  85. 「地上から消えた動物」ロバート・シルヴァーバーグ ハヤカワ文庫

    絶滅動物の物語。ドードやクアッガやリョウコウバトなど、こういう話は読むとやはり悲しくなるし寂しくなる。また、人間の行いの愚かさも痛感する。一方でバッファローなど絶滅寸前までいって保護して復活させた少ないながら成功した例もあり希望は感じた。

  86. 「LISTEN ー 知性豊かで創造力がある人になれる」ケイト・マーフィ 日経BP

    聞くことの大切さについてこれでもかというくらい論じた本。内容は各方面の「聞くプロ」に著者がインタビューして得たことをまとめている。著者もまた聞くことのプロ。内容が具体的なところがよかった。しかし、電子版で読んだので分からなかったが、紙で500ページもあったのか。長かった。

  87. 「外務省革新派」戸部良一 中公新書

    外務省の中にも英米と対立し世界新秩序を唱えたグループがいた。しばしば軍部以上の強硬論を吐いた。その革新派の中心人物である白鳥敏夫が本書の主人公であると言っていい。それにしても満州事変がいかに全てを変えてしまったことか。

  88. 「雪国」川端康成 新潮文庫

    あまりに有名すぎて読む気がせず、これまで読んでいなかったので読んでみた。作者は説明を端折るため、かなり行間を読む能力が試され、分からない点が多々あった。巻末の注釈がなかったらもっと分からなかったかも。文体は美しい。

  89. 「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ ハヤカワ文庫

    有名なアガサ・クリスティのミステリーの古典的名作。なるほど。閉鎖空間に集められた男女が非現実的な状況に置かれ1人ずつ殺されていく。お互い疑心暗鬼になっていく。人狼ゲームものの元祖か。

  90. 「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティ 創元推理文庫

    登場人物が国際色豊かで面白い。登場人物たちはどうやらフランス語を使っている状況が多いようだ。フランス語を喋れないので英語を使ってやった的なシチュエーションが結構出てくる。

  91. 「要約すると」サマセット・モーム 中村能三訳 新潮文庫

    作家モームの自伝的回想録。とにかく一筋縄ではいかない人物。人間に対する飽くなき関心。昆虫学者のように人間の類型を収集しているように見える。若い頃にやった医者も中年で従事した諜報活動も全ては小説のネタのためだったかと思えてくるほど。内容は、生い立ちに始まり、文学、小説、戯曲、哲学と多岐にわたる。関心は科学にも及びシュレーディンガーとかプランクとか物理学者の名前が出てくるのに驚く。

  92. 「豊饒の海 - 天人五衰」三島由紀夫 新潮文庫

    最終巻。ラストはかなり不可解。老いた本多は醜く描かれる。個人的には、絶妙のバランス感覚と直感力を持った久松慶子がよかった。透との対決は見もの。「天使殺し」をやってのけた。

  93. 「豊饒の海 - 暁の寺」三島由紀夫 新潮文庫

    「豊饒の海」3巻目。やっと読み終わった。物語の起承転結の転に当たるらしいが、確かに話がガラッと変わり、だいぶ倒錯したものに。途中、思想史における輪廻転生説とか、仏教の阿頼耶識の説明とかが延々と出てくるが、難しくてさっぱり分からなかった。

  94. 「狙撃の科学」かのよしのり サイエンス・アイ新書

    兵士かハンターにでもならなければ全く必要のない知識。結構面白い。すべてのページに図があり素人にも分かりやすい。狙撃は一発目で外したら終わり。2発目はないので自動銃を使う意味がなく信頼性の高いボルトアクションの方がいいとか、弾のばらつきを抑えるため自分で火薬を薬莢に詰めるとか。

  95. 「豊饒の海 - 奔馬」三島由紀夫 新潮文庫

    やっと物語が動き出したような気がする。しかし、前知識なしで読み始めたが、これ転生モノだったのか。1巻の「春の雪」はそのための仕込みだったか。

  96. 「日本文化の核心」松岡正剛 講談社現代新書

    話がかなり多岐に渡っているのと著者の膨大な知識の集積の上に書かれた本なので一度読んで全てを理解するのは難しいが、日本文化の重要な部分にデュアリティがあるというのは納得した。

  97. 「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦 角川文庫

    テレビで映画が放映された時に何気なく見てしまったけど、作者は「夜は短し歩けよ乙女」と同じだったのか。映画見る前に読みたかった。なんとも不思議な話。ちょっと気になったのは、主人公のお父さんは何者なのか。息子へのアドバイスといい只者ではない。理論物理学者のような雰囲気があるが、会社員らしい。正確には何をやっている人か謎。フランスに3週間も出張してるし。

  98. 「新板 日中戦争」臼井勝美 中公新書

    日中戦争の経過を読むといつも思うが、近衛文麿と広田弘毅の行動にかなり責任がある。盧溝橋事件のあとの対応で現地では収束に向かっていたのに政府がそれに乗じて増派して拡大する。満州事変や熱河作戦で不拡大方針の中央に対して現地部隊が暴走したのと真逆の関係。もし、このあとの太平洋戦争にまで至る悲劇を避ける分岐点があったとすれば、まさにこのあたりだと思う。

  99. 「核セキュリティの基礎知識」木村直人 日本電気協会新聞部

    核セキュリティだけではなく、保障措置とか、IAEAとかのことを解説してくれている良書。こういったことを一般向けに解説してくれている本はなかなかない。

  100. 「大元帥 昭和天皇」山田朗 新日本出版社

    昭和天皇の戦争指導というタブーに切り込んだ本。最高司令官としての昭和天皇の全く違う側面が見えてくる。天皇を中心に据えて事象を見直してみると不可解だったことにいろいろ説明がつく。

  101. 「東條英機と天皇の時代」保阪正康 ちくま文庫

    東条英機を軸に戦前戦中史を綴った本。厚くて読み応えがあった。よく言われるように東条英機は謹直なだけで視野が狭く小心な人物。本書もそういったエピソードがたくさん出てくる。本来なら大出世するような器ではなかった。それが二・二六事件をきっかけに軍中央で出世して陸軍大臣はおろか首相にまでなってしまう。しかし、大局観や思想を持たない東條が日米交渉や対米戦を指導するなどということは無理な話だった。それは東條にとっても日本にとっても悲劇だった。とはいえ、東條一人に全ての責任を押し付けるのは無理がある。統帥権など当時の政治システム上の問題の方が大きい。本書の言うように明治の建国から内包した矛盾が噴出した。東京裁判をやる際にアメリカは日本の複雑な政治機構を理解するのにかなり苦労したらしいが、現代日本人にとってもかなり理解が難しい。

  102. 「昭和の参謀」前田啓介 講談社現代新書

    7人の参謀について戦中だけでなく戦後にも焦点を当てた本。石原莞爾、辻政信、瀬島龍三の戦後は多少知っていたが、池田純久、八原博通は人物も含めて全然知らなかったので勉強になった。しかし、辻政信の戦後の人気というのはそんなにすごいものだったのか。

  103. 「大本営参謀の情報戦記」堀栄三 文春文庫

    著者は戦時中、情報の分析から米軍の攻撃を正確に予測しマッカーサー参謀の渾名で呼ばれた。しかし、その情報も大本営の作戦に生かされることはなかった。いろいろ考えさせられる。40年間沈黙していたが、保阪正康氏の度重なる説得で筆を執った。

  104. 「祖父東條英機「一切語るなかれ」」東條由布子 文春文庫

    著者は東條英機の孫。書簡や親族のみ知るエピソードから東條英機の知られざる側面が描かれる。戦犯の家族が戦後受けた仕打ちなどこれまであまり語られなかった内容が書かれている。ただ、やや冗長ではある。

  105. 「零戦 その誕生と栄光の記録」 堀越二郎 角川文庫

    設計者自らが書いた零戦開発の記録。理系なら絶対面白い。仕様を満たすため制約条件の下で解を探す。ちなみに零戦のテストパイロットの一人が東工大出身らしい。

  106. 「黄金を抱いて翔べ」髙村薫 新潮文庫

    銀行から金塊を強奪という古典的なテーマながらルパン三世的な明るさはない。その陰鬱なトーンは、読んでいる最中は気が滅入って途中でやめようかと思ったが、不思議なことに読み終わってみるとなぜかもう一度読んでみようかという気にさせる。最後500個の金の延板を鞄に詰めてくたくたになるシーンは、実験室で汗だくになって60個の鉛ブロックを積み上げたのを思い出した。

  107. 「代表制民主主義はなぜ失敗したのか」 藤井達夫 集英社新書

    民主主義=代表制、選挙ではない、という話から始まり、現在の危機的状況、またその打開策が述べられる。なぜ、戦後55年体制化で代表制民主主義がそれなりに機能したか、分かったような気がする。古代アテネでは選挙ではなくくじ引きで決めたらしい。究極のアマチュアリズムだ。

  108. 「誰も語らなかったジブリを語ろう」 押井守 東京ニュース通信社

    この本、面白すぎる。面白すぎて一気に読んでしまった。宮崎駿監督の映画は常々、監督の抱える矛盾が各所で噴出していると思っていたんだけど、宮崎駿を個人的にも良く知る押井守氏が鋭く分析してくれる。私は宮崎アニメで一番好きなのはラピュタなのだが、氏も一番良くできているのはラピュタと言っていてやはりそうかと思った。

  109. 「笹まくら」 丸谷才一 新潮文庫

    数年前に一度読んだのだが、また読みたくなった。主人公は戦中、徴兵忌避者だった男。今は私立大学の事務職員として平凡な日々を送っている。現在と過去の回想が交錯する。行間も開けずにいきなり過去の回想に飛ぶのだが、主人公の心理の流れとともに違和感なく繋いでいて上手い。自由になった戦後の生活より、日本中を逃げ回っていた戦中の方が生きているという充実感があったという皮肉。

  110. 「獣の奏者」 上橋菜穂子 講談社文庫

    3,4巻を読もうと思いつつも何年も積ん読になっていた。1,2巻(闘蛇編、王獣編)の内容をすっかり忘れてしまい、意を決して1,2巻から再読。続けて3,4巻(探究編、完結編)も読んだ。あとがきの作者の言葉が印象的。「物語は、あるとき突然、作者の思惑を超えて動き出すことがあります。… なぜ、こんなものが自分の中から生まれてくるのだろうと思いながら書く― そういう奇妙な経験をすることがあるのです」

  111. 「敦煌」 井上靖 新潮文庫

    前に読んだのは学生の時か。30数年ぶりにふと再び読みたくなって読んだ。出だしと経典を洞窟に隠すこと以外は全く覚えていなかった。改めて読み直すと登場人物が魅力的。ひ弱なのに相手が怒ることを気にせず質問できる主人公。強いのか、馬鹿なのか。

  112. 「物語フィンランドの歴史」 石野裕子 中公新書

    スウェーデンとロシアという強国にはさまれた地域がフィンランドというアイデンティを確立し独立するまで長い時間がかかった。

  113. 「大変化―経済学が教える二〇二〇年の日本と世界」竹中平蔵 PHP新書
  114. 「竹中平蔵―市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像」佐々木実 講談社文庫
  115. 「新しい国へ―美しい国へ 完全版」安倍晋三 文春新書
  116. 「政治家の覚悟」菅義偉 文春新書
  117. 「孤独の宰相―菅義偉とは何者だったのか」 柳沢高志 文藝春秋
  118. 「岸田ビジョン」岸田文雄 講談社+α新書
  119. 「実行力」橋下徹 PHP新書
  120. 「十字軍物語」 塩野七生 新潮文庫

    たいてい十字軍の話というのは、その是非ばかりが話の中心になるが、この本は人間ドラマを描くことに専念している。全4巻で9回の十字軍を描く。第一次十字軍に参加した諸侯も今まで全然知らなかったけど皆えらく個性的だ。

  121. 「古代国家はいつ成立したか」 都出比呂志 岩波新書
  122. 「独ソ戦」 大木毅 岩波新書

    史上最も凄惨な戦争、独ソ戦。ソ連側の死者数2700万人。ボリシェヴィキは滅ぼすべきというナチの世界観から東部戦線は西部戦線と異なり絶滅戦争となった。それ故に戦場でのソ連の報復もまた容赦のない苛烈なものに。

  123. 「官邸は今日も間違える」 千正康裕 新潮新書

    元官僚の著者が、政策が作られていく仕組みを解説。かつての官僚主導から現在の官邸主導に大きく変わったことが強調される。中身はタイトルほど官邸主導を揶揄していなくて、とても真面目な本。

  124. 「アフガニスタンの診療所から」 中村哲 ちくま文庫

    上からの国際協力ではなく現地の人々の視点で行う中村哲先生の姿勢が心を打つ。大国に翻弄され続けたアフガニスタン。中村先生の怒りが随所に。世間受けする派手な活動は却って人々を困らせる。現場の地道な活動の大切さ、忘れちゃいけない。

  125. 「ブルシット・ジョブの謎」 酒井隆史 講談社現代新書

    誰でもあげろと言われればいくらでもあげられるクソどうでもいい仕事。個人的には茶番と呼んでいたが、こっちの方がネーミングセンスがいい。タイトルにひかれて買ったが、読んでみるとかなり深い本だった。社会学的、哲学的考察が面白くて、ネオリベラリズムと官僚制の意外な相性など、なるほどと思った。もともとブルシットジョブを最初に提唱したグレーバーという人の理論(著者が翻訳している)を解説するために書かれた本だが、ですます調の独特の言い回しに作者のユーモアを感じた。

  126. 「脳を司る「脳」」 毛内拡 講談社ブルーバックス

    ニューロンだけでは脳は分からないという話。最近の研究からこれまであまり重要視されてなかったグリア細胞が重要な役割を担っていることが分かってきた。老廃物除去の話は聞いていたけど情報処理にも関与しているとは。まだ分からない謎がいっぱい。こういった研究から寝ないというのがいかに脳に悪いかよく分かる。脳の老廃物は寝ているときにしか効率よく除去されない。「寝ないでがんばる」というのが危険な行為としてもっと認識されていい。

  127. 「秀吉の出自と出世伝説」 渡邉大門 洋泉社 歴史新書

    なるべく一次資料にあたり人間秀吉を浮かび上がらせようとした試み。面白かったので一気に読んでしまった。秀吉は農業だけではやっていけない百姓としても最底辺の家に生まれた。極貧の生活を生き抜くために薪売りや連雀商人やいろんなことをやらねばならなかった。容姿も醜い。そんな男が出世して成功し関白になったのは当時としてあり得ない奇跡。だが、最後までその出自に苦しめられた。

  128. 「星の王子さまの世界」 塚崎幹夫 中公新書

    やはり単なるメルヘンではなくて当時のサンテグジュペリの苦しみが爆発したものなんだ。亡命先のアメリカから祖国フランスに何もできない焦り。行動の作家には耐えられなかった。執筆後に取った行動は王子さまそのもの。唐突な比喩も本書でなるほどと思った。

  129. 「山霧」 永井路子 文春文庫

    25年前、大河ドラマで毛利元就をやっていた時。原作を読みたいと買った本。やっと読んだ。ドラマの中で尼子に包囲された元就が大演説を打ち兵を鼓舞して霧の中つっこんで行くシーンが印象的だったのだけどやはり原作にはないのね。好きなシーンではあるけど。

  130. 「狩猟始めました」 安藤啓一、上田泰正 ヤマケイ新書

    自分が狩猟者になることはないと思うけど、狩猟、奥が深い。狩猟者になってはじめて見える自然がある。よい狩猟者になるには森と同化して森を感じないといけないんだ。

  131. 「人を動かす対話術」岡田 尊司 PHP新書
  132. 「沈みゆく大国 アメリカ 逃げ切れ!日本の医療」 堤未果 集英社新書
  133. 「沈みゆく大国 アメリカ」 堤未果 集英社新書
  134. 「いのちの車窓から」 星野源 角川
  135. 「ジョージ・オーウェル」 川端康雄 岩波新書

    とても面白かった。「1984年」を読んだ時にはオーウェルのことをよく知らずガリガリの反共主義者と思ったが、どうもそう単純な人物ではない。とても不器用で繊細でやさしい男が傷つきながら実体験として得た経験が作品の土台になっている。

  136. 「ヒトラーの脱走兵」 對馬達雄 中公新書

    一人の老いた元脱走兵の行動をきっかけに戦後も虐げられた脱走兵・戦時反逆者が復権するまで。戦後意図的に作られた「ナチスとは距離を置いていた軍司法官」というイメージが覆されていく。その過程に目が離せず、一気に読んでしまった。

  137. 「ヒトラーに抵抗した人々」 對馬達雄 中公新書

    自らの道義心に基づいて命がけで行われた抵抗活動。しかし、ヒトラーの圧倒的支持の中、裏切り者扱いされ戦後もなかなか名誉が回復されなかったという。大モルトケの末裔も抵抗運動の中心となって処刑されているとは。全体像が掴めて勉強になった。

  138. 「白仏」 辻仁成 文春文庫
  139. 「鷲は舞い降りた」ジャック・ヒギンズ 早川文庫
  140. 「美貌のひと2」 中野京子 PHP新書

  141. 「美貌のひと」 中野京子 PHP新書

    面白いので一気に読んでしまった。表紙の絵(クラムスコイ「忘れえぬ女」)は、この本で初めて知った。なんとも表情が謎めいていて忘れがたい。続巻も面白かった。

  142. 「文部科学省」青木栄一 中公新書
  143. 「銀の匙」中勘助 新潮文庫

    読んだことなかったので読んでみた。著者の子供時代の回想が綴られる。文体がいい。人物や事物の描写も細かい。明治時代の遊びとか玩具とか菓子とか風俗習慣とか現代人には分からないので注釈が助かる。明治の生活のちょっとした疑似体験をするような感じになる。

  144. 「英国諜報員アシェンデン」 サマセット・モーム 新潮文庫

    これは面白かった。モームは第一次大戦中、諜報活動に従事していた。本人はフィクションとは言っているけど、その体験がかなり活かされていると思われる作品。主人公のアシェンデンは作家だが、諜報活動にも従事している。007のようなアクションはなくあくまで地味な諜報活動。それがかえってリアリティがある。鋭い人間観察と英国人らしい皮肉。随所にユーモアや不条理が散りばめられている。ヘアレスメキシカンって何者だよ。

  145. 「武器よさらば」ヘミングウェイ 大久保康雄訳 新潮文庫

    主人公たちがイタリアから逃れてスイスに入った時の描写がいい。スイスの役人同士のウィンタースポーツはどこがいいかというどうでもいい口論が、イタリアでの緊迫した状況と対極をなしていて天国に感じる。しかし、ラストは辛い。

  146. 「歴史としての社会主義」 和田春樹 岩波書店

    この本が書かれたのはソ連崩壊直後。本書によるとマルクスは資本主義についてはあれだけ詳細な鋭い分析を行っていながら革命後の社会についてはざっくりとしたイメージしか持っていなかったらしい。社会主義というのは根底にユートピア思想がある。マルクス自身もユートピア思想を批判していながらそこから脱却できていなかった。面白いと思ったのは近代に書かれたユートピア小説が私有財産を否定した後、何を労働のモチベーションにするかで苦心していることだ。もう一つ面白いと思ったのはレーニンが第一次大戦下のドイツに社会主義のモデルのヒントを得ていること。戦争という一つの目的のために社会のあらゆるものが合理化され、国民はパーツとしてシステムの中に組み込まれる。レーニンはこれを緊急時の体制ではなく常態とすることを考えたらしい。ちなみに最後にソ連崩壊後の世界がどうなるかについての考察があるが30年たった現在から見ると興味深い。いかに未来を予測することが難しいかがよく分かる。

  147. 「動物農場」ジョージ・オーウェル 開高健訳 筑摩書房

    何とも言えない読後感。考えさせられる。悲惨だが、「1984年」と違いユーモアはある。農場から人間たちを追い出して自由を手に入れた日の朝はなんと素晴らしい朝だったか。それは確かに偽りのない革命だった。しかし、その後は動物たちの夢見たユートピアにはならなかった。

  148. 「地中海世界とローマ帝国」 本村凌二 講談社学術文庫

    単なる通史ではなく、以前の帝国との比較やローマ人はどういう人々かといった考察が面白い。五賢帝の後の軍人皇帝時代の混乱ぶりはひどいが、その後、キリスト教を取り込みながら一旦持ち直すのもすごい。

  149. 「物語ベルギーの歴史」松尾 秀哉 中公新書

    フランス語とオランダ語の言語問題がベルギーの歴史でここまで深刻な政治問題とは知らなかった。

  150. 「ブロックチェーン」岡嶋裕史 講談社ブルーバックス

    これまで断片的なことばかり聞いてていまいちよく分かっていないので読んでみた。なるほど。考えた人は頭がいい。しかし、マイニングの1回あたりの成功報酬額は2018年当時の相場で1千万円にもなるのか。それは苛烈な競争にもなるな。

  151. 「人間・始皇帝」 鶴間和幸 岩波新書

    近年の考古学的知見も取り入れた本。こういうのが読みたかった。しかし、2000年代に入ってからも当時の役人が書いた竹簡が何万点も古井戸から見つかるってすごい。あと天文学的な考察からかなり正確に年が定まるのは面白い。彗星の出現が使えるのは知っていたけど不吉な惑星の動きも使えるのか。史記には始皇帝が死ぬ前年に火星がさそり座アンタレスに留まったとあるらしいが、天文学的にはこれは始皇帝の死んだ年に起きているそうだ。物語の中で意図的に前年にずらされたと考えられる。また、始皇帝の死後、影で権力をふるった趙高は実は宦官であるとは同時代資料にはどこにも書かれていないというのも驚き。始皇帝の時代は、まだ皇帝の側に仕える宦者は必ずしも去勢された宦官というわけではなかったらしい。それは唐代のイメージだとか。

  152. 「湿地帯中毒」 中村淳 東海大学出版部

    面白かった。著者の淡水魚愛に敬服。タイトルもいい。

  153. 「古都」川端康成 新潮社

    高校の時に国語の教材として読まされたけど内容を全く覚えていなかった。年取ると感じ方も変わる。年齢的に主人公の親の方が近くなった。あとがきの川端康成の解説がすごい。睡眠薬で薬中になりながら書いたそうだ。作品はそんな狂気と対局にある。単行本の表紙には東山魁夷がプレゼントした絵が使われたそうだ。

  154. 「SDGs」南博 , 稲場雅紀 岩波新書
  155. 「ハプスブルク帝国」 岩崎周一 講談社現代新書

    近代に入ってからのハプスブルク帝国の収拾のつかなさが、ある意味魅力的。多文化カオスの中から傑出した芸術家や文人、学者が生まれている。

  156. 「マンガ 平壌 あるアニメーターの北朝鮮出張記」 ギィ・ドゥリール 明石書店

    フランス系カナダ人のアニメーターが北朝鮮に仕事で行き、そこで体験したことを書いた記録。前々から読みたいと思っていたのだが、絶版になっていて読めなかった。古本屋でやっと手に入れた。外国人が行けるところは限られているのだろうが、それでも実際に長期で滞在した人の体験は興味深い。

  157. 「ゲンロン戦記」 東浩紀 中公新書ラクレ
  158. 「ヨーロッパ分断1943 」 広瀬佳一 中公新書

    タイトルからパッと内容分からなかったけど読んでみたら面白かった。第二次大戦下での東欧諸国の生き残りの模索。ポーランドとチェコスロバキアを軸に展開。大国の思惑に翻弄され結局は実現しなかった東欧諸国の連合構想の夢。大戦中のソ連の外相モロトフにつけられた綽名「鉄の尻を持った男」には思わず笑った。スターリンに対する忠誠心から、ひたすら机に向かって辛抱強く仕事をする姿を党長老が揶揄した言葉らしい。その勤勉さと忠誠心ゆえに粛清を生き延びた。しかし、確かにポーランド亡命政府の首班シコルスキーの飛行機事故は謎めいている。

  159. 「マックス・ウェーバー」野口雅弘著 中公新書

    思想の方は難しくてなかなか頭がついていかなかったが、ウェーバーが、講演で言った「人事の審査を思い出したがる大学教員はいない」というのはよく分かった。

  160. 「大学イノベーション創出論」益一哉 日経BP
  161. 「ライン河」加藤雅彦 岩波新書

    仏独の歴史をライン河を軸に整理し直した本。ドイツ人は19世紀になるまでラインにロマンを感じていなかったというのは面白い。ラインロマンティシズムの火付け役はイタリア人やイギリス人だったというのだから。その後、ナショナリズムとつながっていく。

  162. 「十四の嘘と真実」ジェフリー・アーチャー 新潮文庫
  163. 「かもめ食堂」群ようこ 幻冬舎文庫
  164. 「リバタリアニズム」 渡辺靖 中公新書

    リバタリアン、日本では馴染みの薄い言葉だと思う。テーブルの上に置いておいたら、家族からバタリオン?オバタリアン?と言われた。あえて訳すと自由至上主義者。アメリカならではの思想だと思う。

  165. 「百年戦争」佐藤猛 中公新書

    丁寧に書かれていて面白い。高校で習った「教皇のアヴィニョン捕囚」って最近の研究では教皇の自発的なものと考えられてるのか。201ページにあるシャルル7世の肖像画。やはり意地が悪そうな印象。生前描かれたようで近代のジャンヌダルク伝説の影響を受けているわけでもないだろうから、実際あまりいい性格ではなかったのだろうか。佐藤賢一の「傭兵ピエール」を読んだ時、シャルル7世のランスでの戴冠式がひとつのクライマックスになっていて、その時は何がそんなにすごいのか、いまいちピンと来なかった。ランスでの戴冠の意味がやっと分かった。百年戦争終わった後も1802年までフランス王の称号を肩書きからはずさなかったイングランド王。なかなかしつこい。

  166. 「荒木飛呂彦の漫画術」 荒木飛呂彦 集英社新書

    思わず買って読んだ。漫画でなくてもヒントになることが書いてある。「ですから、最も基本的なことですが、締め切りを守ること、そのために一定のリズムで漫画を描き続けることは何よりも大切だということを、ここにあえて記しておきます」来年は締め切りを守る年にしようと思った。

  167. 「英仏百年戦争」 佐藤賢一 集英社新書

    さすが佐藤賢一、英仏百年戦争を面白く描く。イギリス人は百年戦争を負けたとは思っていないのか。百年戦争はフランスとイギリスの戦争というよりもフランス王とイギリスに領地を持つフランス貴族の争いと理解する方がいいことがよく分かる本。

  168. 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾 角川文庫
  169. 「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦 角川文庫
  170. 「物語イタリアの歴史 解体から統一まで」藤沢道郎 中公新書

    十人の人物を取り上げ歴史を語るスタイル。性格の素直なボッカッチオ、尊敬する大文人ペトラルカに「ちゃんとしたもの書くならラテン語でしょう」とデカメロンをダメ出しされ、意気消沈。イタリア語で小説書くのやめてしまう。デカメロン読んでみたくなった。ボッカッチオ、その後、一念発起してラテン語勉強するもキケロなみのラテン語が書けたペトラルカのレベルに達するはずもなく。性格の良さが災いした。

  171. 「ビザンツ帝国 ― 千年の興亡と皇帝たち」中谷功治 著 中公新書

  172. 「ドイツ史10講」坂井榮八郎 岩波新書

  173. 「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」塩野七生 新潮文庫

  174. 「神聖ローマ帝国」菊池良生 講談社現代新書

  175. 「物語 ドイツの歴史 - ドイツ的とは何か」阿部謹也 中公新書

  176. 「国家・企業・通貨 - グローバリズムの不都合な未来」 岩村充 新潮選書

    当たり前だと思っている国民国家、株式会社、お金がどこから来たのかがよく分かった。

  177. 「白人ナショナリズム - アメリカを揺るがす「文化的反動」」渡辺靖 中公新書
  178. 「大分断 ー 教育がもたらす新たな階級化社会」エマニュエル・トッド 大野舞訳 PHP新書
  179. 「EU離脱 - イギリスとヨーロッパの地殻変動」鶴岡路人 ちくま新書
  180. 「ドナルド・トランプ 劇画化するアメリカと世界の悪夢」佐藤伸行 文春文庫
  181. 「イスラーム国の衝撃」池内恵 文春新書
  182. 「現代アラブの社会思想」池内恵 講談社現代新書
  183. 「豊饒の海 一 春の雪」三島由紀夫 新潮文庫
  184. 「女帝 小池百合子」石井妙子 文藝春秋

    カイロ時代の同居人の証言は文学的ですらある。何か村上春樹的なものを感じた。

  185. 「ジゴロとジゴレット:モーム傑作選」サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫
  186. 「沈黙」遠藤周作 新潮文庫
  187. 「兎の眼」灰谷健次郎 新潮文庫
  188. 「赤い子馬」スタインベック 新潮文庫

    「贈り物」「大連峰」「約束」「開拓者」の4作が収録されている短編集。あとがきによれば「赤い子馬」の連作として書かれたのは、最初の3作。「開拓者」は後で書かれた短編らしい(登場人物、舞台設定は同じだが)。どうりで3作の話が全く「開拓者」に出てこないわけだ。

    感想つづき

    物語は主人公ジョーディ少年の成長を描く。舞台はスタインベックの小説でお馴染みのサリーナス渓谷の牧場。厳格な父とやさしい母、そして使用人のビリー・バックが主な登場人物。使用人のビリーの存在が家族の人間関係に厚みを加えている。ビリーは長年雇われている使用人。分をわきまえた実直な中年男。馬のことならなんでも分かる。ジョーディはビリーから様々なことを学ぶ。ビリーを師のように慕い信頼する一方でしばしば使用人として目下に見る態度も示す。「約束」の終盤のクライマックスの描写がいい。ビリーが苦渋の決断で男の約束を果たす。

    また、父の描き方もいい。父のカールは息子の前で厳格な父を演じている。リーダーとして強くあらねばならないという気持ちから無理をしている(ホワイトベースのブライトみたいだ)。しばしば狭量な性格や意地の悪いところも見せてしまう。

    少年の成長物語という点ではヘミングウェイのニック・アダムスが登場する短編が思い出される。大自然の中で少年が男として成長するという骨太な物語はアメリカらしい。ヘミングウェイのニック・アダムスものは少年時代から大人まで様々な時代が描かれている。スタインベックは10歳のジョーディしか書いていない。この後の成長も書いて欲しかった。

  189. 「虹いくたび」川端康成 新潮文庫

    異母三姉妹の話。複雑な父と三姉妹の関係。境遇の違いからお互いに埋められない溝がある。戦後すぐに書かれた作品。個人的にはこの後に書かれた「山の音」の方が面白かった。

  190. 「スティル・ライフ」池澤夏樹 中公文庫

    池澤夏樹の小説初めて読んだ。文体がたしかに理系の村上春樹。でも村上作品のような闇はない。爽やかな読後感。

  191. 「『砂漠の狐』ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨」大木 毅 角川新書

    この本はかなり面白かった。欧米での最新の研究を踏まえロンメル神話を客観的に検証している。パウル・カレルの「砂漠のキツネ」やナチのプロパガンダによる偶像化を排し、等身大のロンメルを描いている。ちなみにパウル・カレルは元ナチの情報将校だったことが戦後の研究で判明している。

    感想つづき

    戦術レベルでは卓抜した指揮官だったが、戦略レベルの思考ができなかったようだ。え、この状況で奇襲かけるのという意表を突く攻撃は、特攻野郎Aチームのジョン・ハンニバル・スミス大佐を思わせるものがあった。上層部からの命令を無視して頻繁に奇襲をかけている。異常なまでの功名心がそうさせたらしい。プロイセン貴族ではなかったため士官学校には入れず、参謀教育を受けていないということがロンメルの欠点となった。やたら前線に立ちたがるため北アフリカ戦線では作戦に支障をきたすことがしばしばあった。また、補給を軽視する傾向があった。

    ただ、ロンメルが戦争犯罪と関わっていないというのは本当のようだ。東部戦線に派遣されていないという運もあるのだが、彼の騎士道精神も反映されている。実際、北アフリカ戦線で捕虜にした自由フランス軍の処刑命令を拒否している。最後はヒトラー暗殺計画に関わった疑いからヒトラーから自殺を強要された。暗殺計画に関わったのか、いないのかというのも長年の論争だが、残された史料から関わった可能性が高いらしい。

  192. 「物語 カタルーニャの歴史―知られざる地中海帝国の興亡」田澤耕 中公新書
  193. 「世界最強の女帝 メルケルの謎」佐藤伸行 文春新書

    興味深い。東独時代のメルケルに謎が多いのと欧州政治の裏の駆け引きがすごいのがよく分かった。ちなみにメルケルは東独時代は物理学者。

  194. 「アメリカの大学の裏側 『世界最高水準』は危機にあるのか?」アキ・ロバーツ 竹内洋 朝日新書
  195. 「イランの野望 浮上する『シーア派大国』」鵜塚健 集英社新書
  196. 「大学改革の迷走」佐藤郁哉 ちくま新書
  197. 「イスラームの世界地図」21世紀研究会編 文春文庫
  198. 「イスラーム文化」井筒俊彦 岩波文庫
  199. 「イスラームの歴史」 カレン・アームストロング 中公新書
  200. 「イスラム2.0」飯山陽 河出新書
  201. 「旅のラゴス」筒井康隆 新潮文庫
  202. 「グレート・ギャッツビー」スコット フィッツジェラルド 新潮文庫
  203. 「伊豆の踊子」川端康成 新潮社
  204. 「ノルウェイの森」村上春樹 講談社文庫
  205. 「知の仕事術」 池澤夏樹 インターナショナル新書 集英社
  206. 「二都物語」チャールズ・ディケンズ 新潮文庫
  207. 「山の音」川端康成 新潮社
  208. 「アクロイド殺害事件」アガサ・クリスティ 創元推理文庫

    冒頭にクリスティ自身の短い感想が載せてあるのだが、その一言で仕掛けが分かってしまった。ああいうのはやっぱりあとがきとして欲しかった。

  209. 「ライ麦畑でつかまえて」サリンジャー 白水社
  210. 「ハツカネズミと人間」スタインベック 新潮文庫
  211. 「山椒魚」井伏鱒二 新潮文庫
  212. 「人類の未来」ノーム・チョムスキー他 NHK出版
  213. 「未来は土木がつくる。これが僕らの土木スタイル!」 土木学会建設マネジメント委員会 将来ビジョン特別小委員会
  214. 「この人を見よ」 マイクル・ムアコック ハヤカワ文庫
  215. 「マネジメント信仰が会社を滅ぼす」深田 和範 新潮選書
  216. 「声優魂」大塚明夫 星海社新書庫
  217. 「捏造の科学者」 須田桃子 文春文庫
  218. 「続 昭和の怪物 七つの謎」 保坂正康 講談社現代新書
  219. 「昭和の怪物 七つの謎」 保坂正康 講談社現代新書
  220. 「ブームをつくる」 殿村美樹 集英社新書
  221. 「ティファニーで朝食を」 トルーマン カポーティ 新潮文庫
  222. 「スタインベック短編集」スタインベック 新潮文庫
  223. 「アメリカンスクール」小島信夫 新潮文庫
  224. 「ヘミングウェイ短編集(一)(二)」
  225. 「東京奇譚集」村上春樹 新潮文庫
  226. 「月と六ペンス」サマセット・モーム 新潮文庫
  227. 「人間の土地」サン=テグジュペリ 新潮文庫
  228. 「海辺のカフカ」村上春樹 新潮文庫
  229. 「思い出のマーニー」ジョーン・G・ロビンソン 岩波少年文庫
  230. 「奥の部屋」ロバート・エイクマン ちくま書房
  231. 「ナイン・ストーリーズ」サリンジャー 新潮文庫
  232. 「石油がわかれば世界が読める」瀬川幸一編 朝日新書

    石油学会が設立50周年を記念して2008年に出した一般向けの本。石油は現代文明を支える、なくてはならないエネルギー。だが、知っているようで知らないことが多い。科学的な側面から、環境、歴史、政治まで解説していてとても勉強になった。

  233. 「ヒトラーとナチ・ドイツ」 石田勇治 講談社現代新書

    ヒトラーとナチ・ドイツの通史。ヒトラーの生い立ちから政権を取り第二次大戦を起こすまでの政治史が中心となっている。とても分かりやすい良書。一気に読んでしまった。ある意味普通の青年だったヒトラーがいつ反ユダヤ主義者になったのか、民主主義国家だった当時のドイツをどうやって乗っ取ったのか、ヒトラーの反ユダヤ主義とは何なのか、ホロコーストはなぜ始まったのかがよく分かる。人類の負の教訓として永遠に記憶すべき話。

  234. 「たのしいムーミン一家」トーベ・ヤンソン 講談社文庫

  235. 「コーヒーの科学」旦部幸博 講談社ブルーバックス

  236. 「星を創る者たち」谷甲州 河出書房

    さすが谷甲州。めちゃめちゃ地味なテーマで面白い。他の作家には書けないテーマ、土木作業。太陽系内の月や惑星での土木作業を淡々と描く。土木工学科出身で若い頃に建設会社、海外青年協力隊という経歴を持つ谷甲州ならでは。7篇の読み切り短編から構成されるが、お互いに関係を持っており、最終話では驚きの結末に。

  237. 「気高く、強く、美しくあれ 日本の復活は憲法改正からはじまる」櫻井よしこ PHP文庫
  238. 「日本会議 戦前回帰への情念」山崎雅弘 集英社新書
  239. 「憲法九条を世界遺産に」太田光、中沢新一 集英社新書
  240. 「検証・真珠湾の謎と真実」秦郁彦 中公文庫

    これまでのモヤモヤがすっきりした。巷でよく信じられている陰謀論。ルーズベルトは本当に日本の真珠湾攻撃を知っていて、敢えて攻撃を許し、二次大戦参戦の口実としたのか?本書はその検証である。気持ちが良いほどに陰謀論の根拠を丹念に潰していってくれる。4人の共著で編者は秦郁彦先生。データに基づいた検証に定評のある歴史家だ。よく分かったのは、陰謀論の論拠とされているかなりの部分が錯誤、創作、情報の歪曲、軍事常識の理解不足といったものであると言うことだ。

  241. 「原点」安彦良和 岩波書店

    ガンダムの作画監督として有名な安彦良和が自分の人生を振り返った本。驚いたのは、何と安彦良和は弘前大学在籍時代、全共闘の活動家だったということ。しかも、リーダー的存在。 東大の安田講堂事件の1年後に起きた弘前大本部占拠事件では主謀者として逮捕されてしまう(実は安彦は穏健派で止めようとしていたらしいが警察は知るよしもない)。

  242. 「起終点駅 ターミナル」桜木紫乃 小学館文庫
  243. 「中継ステーション」クリフォード・D・シマック 早川書房

    なんとも言えないいい話。だいぶ前にアマゾンの書評で見つけて読みたいと思ったんだけど、どうしてその書評にたどり着いたか忘れた。それがネット時代の本の見つけ方なのかな。これを軽く派手にすると映画のメン・イン・ブラックになる。

  244. 「フランス革命の肖像」佐藤賢一 集英社新書

  245. 「小説 フランス革命」佐藤賢一 集英社文庫

    全18巻。やっと読み終わった。長かった。結末は分かっているのに止められない。全国三部会からロベスピエールの処刑まで。とにかく登場人物が多い。でも、一人一人が魅力的に描かれているので忘れられない。世界史でやった無味乾燥な人名の羅列とは違う。

  246. 「さいはての島へ」アシューラ・K・ル・グウィン 岩波少年文庫

  247. 「こわれた腕環」アシューラ・K・ル・グウィン 岩波少年文庫

  248. 「影との戦い」アシューラ・K・ル・グウィン 岩波少年文庫

    ファンタジーの古典的名作、ゲド戦記。岩波少年文庫で対象が中学生以上となっているが、内容はかなり難しい。人の心の闇とは何か、自由とは何か、死とは、そういった永遠のテーマを淡々と描く。この物語は映像化が難しい。ジブリが失敗したのもよく分かる。闇との対峙も内面的な精神エネルギーの消耗なので外からはよく分からない。竜以外はモンスターは出てこないし。映像化しやすいハリー・ポッターとは真逆のファンタジー。

  249. 「三銃士」アレクサンドル・デュマ 角川文庫
  250. 「赤目のジャック」佐藤賢一 集英社文庫
  251. 「すべての仕事を3分で終わらせる―外資系リーゼントマネージャーの仕事圧縮術」岡田兵吾 ダイヤモンド社
  252. 「サイコパス」中野信子 文春新書
  253. 「Twelve Y. O.」福井晴敏 講談社文庫
  254. 「そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史」クライブ・フィンレイソン 白揚社
  255. 「にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語」サム・キーン 朝日新聞出版
  256. 「工作艦間宮の戦争: 新・航空宇宙軍史」谷甲州 ハヤカワ文庫
  257. 「エンピツ戦記 - 誰も知らなかったスタジオジブリ」舘野仁美 中央公論社
  258. 「終戦のローレライ」福井晴敏 講談社文庫
  259. 「X線からクォークまで」セグレ みすず書房
  260. 「陰謀史観」秦郁彦 新潮新書

  261. 「間抜けの構造」ビートたけし 新潮新書

  262. 「雑巾がけ: 小沢一郎という試練」石川知裕 新潮新書

  263. 「読書の技法」佐藤優 東洋経済新報社

  264. 「下町ロケット2」池井戸潤 文春文庫
  265. 「民王」池井戸潤 文春文庫
  266. 「下町ロケット」池井戸潤 文春文庫
  267. 「コロンビア・ゼロ: 新・航空宇宙軍史」谷甲州 ハヤカワ文庫
  268. 「ダスト」ヒュー・ハウイー 角川文庫
  269. 「シフト」ヒュー・ハウイー 角川文庫
  270. 「ウール」ヒュー・ハウイー 角川文庫
  271. 「それをお金で買いますか ― 市場主義の限界」マイケル・サンデル 早川書房
  272. 「のぼうの城」和田竜 小学館文庫
  273. 「用心棒日月抄」藤沢周平 新潮文庫
  274. 「背筋が冷たくなる話」谷甲州 集英社文庫
  275. 「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 」松永和紀 光文社新書
  276. 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫
  277. 「出発点 ― 1979~1996」宮崎駿 徳間書店
  278. 「本へのとびら」宮崎駿 岩波新書
  279. 「流れ行く者」上橋菜穂子 新潮文庫
  280. 「天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編」上橋菜穂子 新潮文庫
  281. 「天と地の守り人 第二部 カンバル王国編」上橋菜穂子 新潮文庫
  282. 「天と地の守り人 第一部 ロタ王国編」上橋菜穂子 新潮文庫
  283. 「蒼路の旅人」上橋菜穂子 新潮文庫
  284. 「神の守り人 帰還編」上橋菜穂子 新潮文庫
  285. 「神の守り人 来訪編」上橋菜穂子 新潮文庫
  286. 「虚空の旅人」上橋菜穂子 新潮文庫
  287. 「夢の守り人」上橋菜穂子 新潮文庫
  288. 「闇の守り人」上橋菜穂子 新潮文庫
  289. 「精霊の守り人」上橋菜穂子 新潮文庫

    大好きなシリーズ。和製ファンタジーの傑作。魅力的なキャラクター、壮大な世界設定、引き込まれる物語展開、緻密な描写、どれをとっても最高。ファンタジーは架空世界の出来事だが、それを読者にリアリティを持って感じさせるには、見てきたようなディテールにこだわった描写が必要になる。上橋菜穂子はそれがすごくうまい。それはやはり上橋菜穂子が文化人類学者であるのも関係しているのではないだろうか。主人公は、女用心棒のバルサと新ヨゴ王国の皇子チャグム。ひょんなことからバルサがチャグムの命を守る羽目になり決死の逃避行をする。世界は目に見える世界サグと見えない世界ナユグが重なっており、2つの世界はしばしば影響を及ぼしあう。チャグムが命を狙われることになったのもそれが原因。チャグムを救うためにバルサは奮闘し、王宮育ちの世間知らずだったチャグムもバルサと旅をしながら逞しく成長していく。

  290. 「シュリーマン旅行記 清国・日本」ハインリッヒ・シュリーマン 講談社学術文庫
  291. 「王妃の離婚」佐藤賢一 集英社文庫
  292. 「剣闘士スパルタクス」佐藤賢一 中公文庫
  293. 「カエサルを撃て」佐藤賢一 中公文庫
  294. 「カルチェ・ラタン」佐藤賢一 集英社文庫
  295. 「双頭の鷲」「傭兵ピエール」佐藤賢一 新潮文庫
  296. 「傭兵ピエール」佐藤賢一 集英社文庫
  297. 「すべての経済はバブルに通じる」小幡績 光文社新書
  298. 「困った部下を戦力化する45の即効スキル」西村克己 梧桐書院
  299. 「小さいことにくよくよするな」リチャード・カールソン サンマーク文庫
  300. 「なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか」 日高義樹 PHP文庫
  301. 「日本史の謎は「地形」で解ける」竹村公太郎 PHP研究所
  302. 「太平洋戦争の肉声 第4巻―文藝春秋戦後70年企画 テロと陰謀の昭和史」文春MOOK

    文芸春秋の戦前の記事から事件当事者の手記などを集めたもの。書いたり、語ったりしているのは戦前史で見かける有名な名前ばかり。当時何を考えていたのかが分かる。リアルタイムの記事なので雰囲気も伝わってくる。

  303. 「カッコウの卵は誰のもの」東野圭吾 光文社文庫
  304. 「フリーズする脳―思考が止まる、言葉に詰まる」築山節 生活人新書 NHK出版
  305. 「脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める」築山節 生活人新書 NHK出版
  306. 「ローマ人の物語」塩野七生 新潮文庫
  307. 「銀翼のイカロス」池井戸潤 文春文庫
  308. 「ロスジェネの逆襲」池井戸潤 文春文庫
  309. 「オレたち花のバブル組」池井戸潤 文春文庫
  310. 「オレたちバブル入行組」池井戸潤 文春文庫
  311. 「DIY工具50の極意」西野弘章 山海堂
  312. 「亡国のイージス」福井晴敏 講談社文庫
  313. 「米国製エリートは本当にすごいのか?」佐々木紀彦 東洋経済新報社
  314. 「政権交代とは何だったのか」山口二郎 岩波新書
  315. 「街道をゆく42 三浦半島記」司馬遼太郎 朝日文庫
  316. 「街道をゆく21 神戸・横浜散歩、芸備の道」司馬遼太郎 朝日文庫
  317. 「街道をゆく24 近江散歩、奈良散歩」司馬遼太郎 朝日文庫
  318. 「街道をゆく9 信州佐久平みち、潟のみち」司馬遼太郎 朝日文庫
  319. 「街道をゆく18 越前の諸道」司馬遼太郎 朝日文庫
  320. 「街道をゆく32 阿波紀行、紀ノ川流域」司馬遼太郎 朝日文庫
  321. 「街道をゆく35 オランダ紀行」司馬遼太郎 朝日文庫
  322. 「街道をゆく1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか」司馬遼太郎 朝日文庫
  323. 「昭和天皇」古川隆久 中公新書
  324. 「失敗の本質」戸部良一 中公文庫
  325. 「玄鳥」藤沢周平 文春文庫
  326. 「よろず屋平四郎活人剣」藤沢周平 文春文庫
  327. 「部下を定時に帰す仕事術」佐々木常夫 WAVE出版
  328. 「野村ノート」野村克也 小学館
  329. 「あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書」保阪正康 新潮新書
  330. 「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」榊原洋一 講談社α新書
  331. 「すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇」今野浩 新潮社
  332. 「情報力」佐藤優、鈴木琢磨 イースト・プレス
  333. 「アスペルガー症候群と学習障害」榊原洋一 講談社α新書
  334. 「功名が辻」司馬遼太郎 文春文庫
  335. 「宇宙核物理入門」谷畑勇夫 講談社ブルーバックス
  336. 「大学大競争 -「トップ30」から「COE」へ」読売新聞大阪本社編 中公新書ラクレ
  337. 「インテリジェンス 武器なき戦争」手嶋龍一、佐藤優 幻冬舎新書
  338. 「うるさい日本の私」中島義道 新潮文庫
  339. 「山本勘助」平山優 講談社現代新書
  340. 「朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ」高井伸夫 かんき出版
  341. 「3分以内に話はまとめなさい」高井伸夫 かんき出版
  342. 「「捨てる!」技術」辰巳渚 宝島社新書
  343. 「ギリシア神話を知っていますか」阿刀田高 新潮文庫
  344. 「免疫学の基礎」小山次郎・大沢利昭 東京化学同人
  345. 「錯体のはなし」渡部正利 山崎昶 河野博之 米田出版
  346. 「上意討ち」池波正太郎 新潮文庫
  347. 「竹光始末」藤沢周平 新潮文庫
  348. 「たそがれ清兵衛」藤沢周平 新潮文庫
  349. 「隠し剣秋風抄」藤沢周平 文春文庫
  350. 「隠し剣孤影抄」藤沢周平 文春文庫
  351. 「子どもが育つ魔法の言葉」ドロシー・ロー・ノルト他 PHP文庫
  352. 「蝉しぐれ」藤沢周平 文春文庫
  353. 「プルトニウム」友清裕昭 講談社ブルーバックス
  354. 「よい弁護士、わるい弁護士」加茂隆康 中公新書ラクレ
  355. 「日本語の文法を考える」大野晋 岩波新書
  356. 「切ないOLに捧ぐ」内館牧子 講談社文庫

    脚本家内館牧子が普通のOLから、34歳で会社を辞めて脚本家になるまでの話。ドラマ「ひらり」で主人公が突然、床山(相撲取りのまげを結う人)になりたいと言ったときは、「そんなむちゃくちゃな奴いるわけないだろ」と思ったが、内館牧子は本当にやったらしい。相撲協会に電話して、「床山になりたいんですけど」ときいたらしい。もちろん、断られたが。とにかく、やりがいのある仕事につくためにむちゃくちゃだったらしい。

  357. 「言語を生みだす本能」Steven Pinker NHKブックス

    あまりに面白かったので一気に読みきった。人間の言語というものは生得なものか、後天的なものか、というのがこの本の議題。著者の主張は人間は言葉を覚える前から心内言語の様なものを持っていて、これは人間共通のものだ、というもの。チョムスキーの理論が出発点になっている。さらに、生物学、進化論、脳神経学、著者のユーモア、ウィットを加えて、知的刺激のあふれる本に仕立てている。アメリカではベストセラーになったらしい。

  358. 「最新恐竜学」平山廉 平凡社新書

    ひとむかし前は恐竜というと動きが鈍くて愚かな動物というイメージが一般的だったけど、最近は、「恐竜温血説」とか「恐竜子育て説」とかいう仮説が出されている。「Jurassic Park」でもこういった仮説を取り入れて、恐竜は敏捷で頭の良い動物として描かれていた。それで、実際には、恐竜の研究はどこまで進んでいるのだろう、断片的な知識ばかりで小学校以来、恐竜の本は読んでないなあ、と思って読んだのが本書。

    感想つづき

    この本のユニークな点は著者が恐竜の専門家ではないこと。カメ化石の研究をやっている人である。そのため、カメという逆に絶滅しなかった種から分かる情報を用いながら、客観的に慎重に恐竜という動物を吟味していく。この本ではまず最初に「恐竜とは何ものか」と題して、脊椎動物の中のどういう位置をしめているかを説明する。進化の系統関係を分岐図を用いて説明するのだが、これが分かりやすい。恐竜のみならず、脊椎動物全体の進化系統が分かるように説明してあるので素人の私にも分かる。よくある一般向けの恐竜の本だと、恐竜とその他の爬虫類といった分類をしかねないが、そんなことはない。恐竜以外の爬虫類(カメ、ワニ、トカゲ、ヘビ等)にも十分なページを割いてくれている。

    そして、興味のあった恐竜の生態である。著者は「恐竜温血説」「恐竜子育て説」には無理があるという結論にいたっている。理由については本書を読んでもらえば分かるのだが、いちいちもっともであるさらに著者は、恐竜の姿勢についても異議をさしはさむ。アパトサウルスやマメンチサウルスのような首の長い恐竜は、骨格の構造からいって、首は立てておらずほとんど水平になっていたはずだという。博物館などの化石で首が立てて展示してあるものは、つけ根が脱臼した状態になっていてどう考えても不自然な状態らしい。結局、著者の見解によれば、恐竜というのは長時間激しい運動はできない変温動物で、ふだんはゆっくりと動いていたということになる。また、脳の大きさが体の大きさに比べ極端に小さかったので、たぶん頭もあんまり良くなかったのだろう。

    最後に著者は、「隕石絶滅説」について意見を述べている。「隕石絶滅説」は長年論争の的だったが、1991年、ユカタン半島にそのときの隕石クレーター跡と思われる構造が見つかったので決着がついたように見える。だが、隕石が落ちたのは事実だとしても、それが恐竜絶滅の直接原因になったかどうかが問題である。絶滅しなかった種に着目してみると意外と隕石の影響は受けていない。例えば、カメだと17科のうち15科が生き残っている。他の恐竜以外の脊椎動物も驚くほど隕石激突の影響を受けていないらしい。なぜ、恐竜、アンモナイトなどの動物だけが、絶滅したのか。著者の指摘によれば、隕石が落ちる前から恐竜は絶滅しかかっており、その要因はおそらく気温の低下にあるとのことである。 もしかしたら、二酸化炭素濃度の低下も関係しているのかもしれないとも。

    ちなみに「ジュラシックパーク」に出てきた獰猛な小型恐竜ベロキラプトルを含むマニラプトル類だけは温血だった可能性が高いようだ。というよりも著者の考えでは、これらは原始的な鳥類と考えるべきであり、他の恐竜とは分けて考えた方がいいらしい。この本の中にはベロキラプトルの復元図の挿し絵があるが、羽毛の生えた恐竜として描かれており、「ジュラシックパーク」のラプトルとは全く違う。人によって復元想像図がこうも違うのかと驚いた。

  359. 「Jurassic Park」 Michael Crichton, Arrow Books

    映画にもなったMichael Crichtonのベストセラー。 日本語訳ではなく、原書で読んでみた。映画は子供向けになってたけど、原作の方はもっとプロットが細かい。 これをまともに映像化しようと思ったら2時間くらいじゃ足りなすぎる。 連続ドラマにでもしないとだめだ。 まあでも、CGの発達のおかげでSFXの制作費が安くなって、そのうちこういった小説がTVドラマにできる日が来るんだと思う(トータルリコール2070を毎週見てるとそんな気がする)。

  360. 「動物にとって社会とは何か」日高敏隆 講談社学術文庫

    一般向けに書かれた動物行動学の本。 動物行動学というのは、分子生物学の対極にあるような気がする。 生物を細かく分割し、DNAのレベルから生物を物質として解析する分子生物学に対し、動物行動学では生物を生きたままの生物として研究する。それぞれの動物の行動は、研究者の日々の地道な観察によって明らかにされたものであるが、これを集積していったとき、結局、我々人間というのはどういう動物なのだろうかという疑問に行き着くから面白い。この本の終章でもそうだし、有名なコンラート・ローレンツの「ソロモンの指輪」もそういった疑問に向かっていた。

    感想つづき

    この先生の本とのはじめての出会いは小学生のときに読んだ「ネズミが地球を征服する?」という少年少女向けの本だった。このちょっとショッキングなタイトルに図書館から借りるまでにしばらく躊躇したおぼえがある。だけど、その中で語られていたのはおどろおどろしい話ではなく、種とは何か、動物の行動が種間雑交を避けるのにいかに重要か、動物の個体数がいかに餌と捕食者のバランスの上に成り立っているか、という動物行動学のイロハだった。そして、これは本書「動物にとって社会とは何か」でも語られていることである。

    たいてい生物の行動パターンというものは遺伝的にプログラムされている。オオカミは仲間を殺せるだけの牙を持っているが、けんかの時、他のオオカミを殺すことはない。 これは、オオカミが博愛主義なのではなくて、敗北を認めたオオカミが降伏の姿勢をとると攻撃できなくなるだけなのだそうだ。また、多くの生物は、人口調節機構を持っている。 人口が増えすぎそうになると、交尾しなくなって出生率が下がる。それでも増えてしまえば、外敵に食われるか、余剰個体をどこか他の土地に移住させる(有名なのが異常発生したバッタの移動)。この移住は、死への旅であり、ほとんどの個体が死ぬ。とにかく、生物というのは、その種を存続させるために巧みな機構を行動パターンの中に備えているのである。しかも、その行動は遺伝的にプログラムされたものであり、個々の個体はそれから逃れることはできない。

    ひるがえって、人類はどうなのだろうか、という疑問にこの本は向かっていく。どうやら人類というのは、進化の過程で種を維持するための安全装置をことごとくはずしてきたらしい。これから、人類が絶滅せずに発展するには、このことをよく認識しなければならないと思った。政治的なイデオロギーよりずっと重要である。その辺のことを考慮したシステムを模索しなくてはならない。全体主義にはならず、個々の多様性を尊重して、絶滅しないシステム。果たしてそんなものが存在するのだろうか。生物学者ですらその答えは出していない。

  361. 「張学良 忘れられた貴公子」松本一男 中公文庫

    「張学良-父 張作霖は日本軍に爆殺される。父の後を継いで東北三省を統治。満州事変後、東北軍と共にそこを追われる。蒋介石に従っていたが、1936年、クーデターを起こし蒋介石を西安に監禁(西安事変)。蒋介石を説得して、反目していた共産党と手を結ばせ、抗日戦線を結成させる。」世界史の授業で出てきた張学良の知識はこんな感じだったと思う。1990年にこの張学良の誕生日が報道されたときには驚いた。教科書に出てくるような人物がまだ生きていたからである。戦後ずっと台湾に軟禁されてたらしい。

    感想つづき

    その報道以来、この人物は気になっていた。で、たまたま古本屋で見つけたのがこの本である。小説仕立てで文章はとても読みやすい。もちろん、中国の話なので人名、地名の漢字でたまにひっかかった。それから、プロローグとエピローグ、張学良とおぼしき老人と教会で話をするフィクションの部分は本編と関係してこないので必要ないような気がする。これが、事実なら別だが。

    ともあれ、この物語は劇的である。蒋介石、軍閥、中国共産党、関東軍のせめぎ合い。満州事変後の挫折、復活、対共産党戦での意識の変化。そして、やはりクライマックスは西安事変である。 1936年、蒋介石は共産党との戦闘をやめていた張学良軍を叱咤するために西安に飛ぶ。蒋介石には油断があった。張学良を自分の言うことを聞く坊ちゃんと見くびっていたのだ。実際、蒋介石はたいした警護もつけず、楊貴妃ゆかりの地、清華宮に喜んで寝泊まりした。この清華宮、西安から何十キロも離れた場所にある。12月12日未明、張学良は清華宮に1個大隊を送り込み蒋介石を監禁してしまう。

    ここまでの行動は当時の情勢からして理解可能である。張学良という人物が常識を超越してしまっているのはこの後の行動である。世界は蒋介石は監禁されてもう終わりだと思った。しかし、蒋介石は開放され、南京に送られる。そして、こともあろうに張学良はひとりでのこのこ南京についていくのである。これには、無謀だとして側近や共産党の周恩来が猛反対した。それでも張学良は南京に行く。そして逮捕される。この張学良の行動はだれもうまく説明できない。「あまりにもロマンチックすぎた」という周恩来の言葉を借りる以外説明しようがないと作者は指摘している。

    張学良は現在ハワイに住んでいるらしい(2000年6月25日現在)。

  362. 「南ア共和国の内幕」伊藤正孝 中公新書
  363. 「蛇頭 スネークヘッド」莫邦富 新潮文庫
  364. 「アメリカ人のソ連観」下村満子 朝日文庫

    この本は1983年に朝日新聞で連載された「米国人のソ連観」に大幅に加筆、再構成したもの。軍人、大統領のブレーン、政治家、元駐ソ大使、経営者、農民、労働・市民運動家、学者・学生、ジャーナリストといったアメリカ人60人余へのインタビュー集である。

    感想つづき

    読んでみてまず著者の姿勢が気に入った。著者は無理に自身の結論は出さずにあくまでインタビューの中で彼らアメリカ人にソ連観を語ってもらうことに徹している。こういう手法は、立花隆の「宇宙からの帰還」でもそうだったが、あるテーマにそってかき集めた素材をただ並べただけなのに問題を解析して整然と論理を展開したときより何か強く心に残ることがある。この本もその点で成功していると思った。

    インタビューを行ったのはレーガン政権一期目のときでソ連との関係が悪くなっているときであった。ソ連のアフガニスタン侵攻(1979)でデタントが終わり、それを受けてタカ派のレーガンが大統領になってソ連を「悪の帝国」と呼んでいる時代であった。「アメリカの核戦力はソ連に対して絶対的優位を保てなくなった、核戦力を増強してもう一度絶対的優位をとりもどすべきだ」というのが政府の見解であった。

    アメリカ人のソ連観を特徴づけるものは何かと言えば、それは反共である。アメリカでは労働組合ですら反共である。

  365. 「イギリスは愉快だ」林望 文春文庫

    「イギリスはおいしい」に続くエッセイ集第2弾。面白くて、かつ作者の英国に対する愛情が感じられる。ここでゴチャゴチャ書くと面白さが半減するのでこれ以上言いません。

  366. 「イギリスはおいしい」林望 文春文庫
  367. 「人は海辺で進化した―人類進化の新理論」エレイン モーガン どうぶつ社
  368. 「中世を推理する」邦光史郎 集英社文庫

    ここでいう中世とは日本の中世のこと。鎌倉・室町時代を指す。中世という時代は戦国時代や幕末に比べ、人気がない。だが、著者はこれは面白くないからではなく、あまり知られていないからに過ぎないと指摘する。たしかに。この本を読んでみてそう思った。実際、太平記に描かれているように歴代天皇中もっとも波乱の人生を歩んだ後醍醐天皇が登場し、謎の武将楠木正成の活躍があったのである。それというのも、中世というのは、ちょうど旧支配階級の貴族から新興勢力の武士へ権力が移行する時期であり、その2つの勢力のぶつかり合いでさまざまなドラマが生まれているのである。

    感想つづき

    この手の本というのは、いくつかの違う側面から同じ主題を何度も掘り下げて解説するので同じエピソードが何度も出てくる。おかげで、たった250ページながら、一冊読み終わる頃には、だいたい重要なエピソードとか人物が頭に入っていていい。こういう本で以前読んで面白かったのは、白石一郎の「戦国武将伝」がある。それぞれの武将に対する作者の思い入れがたっぷり入っていて良かった本である。

    足利尊氏、楠木正成、佐々木道誉などの人物解説はもちろん良かったが、意外に面白かったのが<中世の生活>という章である。どんな食事をしていたか、どんなものを着ていたか、といったことである。こういうことを知ると、この時代にぐっと親近感をおぼえた。やはり五感で感じられることを知ると想像にリアリティが増すんだと思う。生活史というのは意外と馬鹿にできないなと思った。

  369. 「天気予報はどこまで正確にできるか」 岡村存 森北出版
  370. 「白きたおやかな峰」 北杜夫 新潮文庫

    ヒマラヤの高峰デュランをめざす男達を描いた山岳小説。パーティに同行した医者は作者の投影。

    学生のとき、「人間存在と倫理」という授業をとった。「神々の哄笑が聞こえる」とこの本が紹介された。その哄笑とやらが聞きたいと思い、読んでみた。しかし、残念ながら私には聞こえなかったようだ。神々の哄笑というものは聞こうとして聞こえるものじゃないらしい。

  371. 「ロンドンの恐怖 -切り裂きジャックとその時代」 仁賀克雄 早川文庫

    作者は日本で唯一のリッパロロジスト。リッパロロジストとは切り裂きジャック研究家のことを呼ぶらしい。切り裂きジャックというのは、1888年の秋にロンドンで起きた猟奇殺人事件の犯人のニックネームである。この事件では、ロンドンのイーストエンドの売春婦4人が惨殺された。犠牲者は鋭い刃物で解剖されており、特に最後の犠牲者の殺人現場は酸鼻を極める。結局、スコットランドヤードの必死の捜査にもかかわらず、犯人は捕まらなかった。

    感想つづき

    本書では、切り裂きジャック事件の推移、今までに出された犯人説について書かれている。だが、この本で一番心を動かされたのは、事件の舞台となったイーストエンドというロンドンの貧民街の描写である。当時、世界の中心だったロンドンには、何万人だかの貧民がいて、さらにその下に何万人かの極貧民がいたらしい。その暮らしはもう人間というより動物である。

    シャーロックホームズの最初の話「緋色の研究」が出たのが1886年だから、ちょうどホームズが活躍した時代である。本書でホームズには出てこないビクトリア朝の裏側を見たような気がする。

  372. 「大帝ピョートル」 アンリ・トロワイヤ 中公文庫

    高校時代にNHKでやっていた「ピョートル大帝」という海外ドラマを見た。なかなか面白かったのを憶えている。ドラマのシーンを思い出しながらこの本を読んだ。

    感想つづき

    ピョートル大帝というのは、要するにロシアをヨーロッパにしようとした男である。日本も明治以降、国をあげて西欧化の努力をしたが、それとはちょっと違う。ピョートルの改革の場合、ピョートルたった一人の強烈な個性でもってそれをやってしまうのである。明治維新後の日本の発展というのは、江戸時代に文化が十分に成熟して近代化の準備ができていたからこそできた。ピョートルの場合、そんな先人の遺産は何もなかった。ゼロから始めなければならなかった。

    ピョートル大帝というのは矛盾した人物である。豪奢な生活よりも質素なものを好み、職人仕事を愛し、自らも手仕事を気晴らしにしていた。かといって、庶民を大切にするかというとそういうわけではなく、密告を奨励し、逮捕、拷問、処刑、シベリア送りという弾圧を躊躇しなかった。その残虐さは折り紙つきで好んで拷問室に出入りしていたという(しまいに自分の息子まで拷問にかける)。一方で貴族以外の庶民にも能力次第で貴族に出世できるという制度もつくり、効率優先の能率主義者だった。

    作者のアンリ・トロワイアの書き方もいい。ピョートルのやったことをいいとか悪いとかいうレベルでとらえるわけではなく、あくまで客観的な立場で書いている。ピョートルがいかに職人の仕事に興味を持ち、自分でやってみることに情熱を燃やしたかについて書きながら、それが行き当たりばったりの表面的知識でしかないことも指摘する。

    しかし、この人物の無茶苦茶には驚かされる。大酒飲みで、何かあるたびに宴会を開かせる。しかも、とても上品なものではない。三日三晩の宴会をよく開いたらしい。宴会の部屋には樽を割って作った大きな容器が二つ置かれ、一つは酒がなみなみと注がれており、もう一つは汚物を入れるために置かれていたという。臣下は強制的に出席させられ、退席は許されない。そのために衛兵が見張っていた。

  373. 「墨攻」 酒見賢一 新潮文庫

    紀元前500年頃、まさに戦国時代の中国、墨子という思想家がいた。ちょうど諸子百家と呼ばれる思想家が乱立していた時代である。だが、この墨子の教えに従う墨家教団は、その中でもきわめて異質な存在であった。墨子の教えの中でも有名なのが非攻である。非攻とは「人を一人殺せば、死罪である。二人殺せば、2度死罪である。だが、戦争で千人殺せば、英雄となる。何たることか!」という論理に基づいている。墨者たちは侵略戦争を不義とみなし、徹底的に非難した。だが、ここまでは極論だが、友愛の精神に基づいている。墨家が異常なのは、侵略戦争が起こったときである。彼らは攻めることは禁じているが、攻められればあらゆる手段を講じて敵を撃退しなければならないと考えていた。それゆえ、墨家の戦闘部門は守城戦のプロたちであった。侵略された国が依頼してくると、墨家は無償でこの戦争職人たちを送り込んで城を防御した。つまり、思想的には戦争を否定しているが、実際的には当時最高レベルの戦闘力を持っているという、奇妙な集団だったらしい。

    感想つづき

    本書は、一人の墨者・革離が小国・梁の防衛に派遣され、住民を指導して、趙の軍勢2万を相手に戦うというものである。本書は漫画にもなっていて、実はそっちの方を先に読んでいた。そのせいか、この作品を純粋に楽しめたとは言えないようである。実際、あらすじを知っているせいか、漫画を読んだときほどの面白さはなかった。本書を読んで分かったが、漫画の方はおおまかな設定は原作のとおりだが、かなり話を膨らませている。それに結末も違う。だが、いちばんの違いは、革離という墨者の描き方である。漫画では革離は人間的であり、住民との絆を深くしていくことで城を守った。原作である本書では、革離は墨家を体現するある意味怪物として描かれている。長期戦での住民の士気を保つのに人間的なものに頼ることはない。すべては規律である。規律を犯したものは即座に斬る。また、革離は墨者というより、戦争職人としての道を日々精進している。「おまえのやっていることは墨者というより、傭兵ではないか」と矛盾点をつかれても、「そういう議論は自分は苦手だ。墨家の理論部門にでもきいてくれ」と気にもしない。

    本書では、革離の守城戦の話以外に墨家教団自体の解説にもかなりの部分をさいている。それもそうだろう。だいたい、墨家の話なんて普通あまり知らない。私も「墨攻」を読む前は、名前しか知らなかった(学校の世界史で名前だけ出てきたような気がする)。まあ、いずれにせよ、こういう奇妙な連中がいたという事実は想像力を刺激する。さらに墨家というのは戦国時代あれだけ勢力を持っていたにも関わらず、その後の中国の歴史から姿を消すのである。これが、また謎を呼ぶ。このへんが作者の創作欲を書き立てたのだろう。

  374. 「ロードス島攻防記」 塩野七生 新潮文庫

    ナポレオンはエジプト遠征途上、その途中にあったマルタ島を攻略して聖ヨハネ騎士団を征服した。下の「東方の夢」でそのマルタ島攻略のところを読んでいるとき、そういえば塩野七生の本で「ロードス島攻防記」というのがあったなあ、と思い出してこの本を読んでみた。聖ヨハネ騎士団はもともと異教徒撲滅のために1099年に設立されパレスチナで戦っていたが、1291年にスルタン・カリルによって地中海に追い出されロードス島に移った。本書はその聖ヨハネ騎士団のロードス島での最後の戦いを扱っている(この戦いに敗れた騎士団はこのあとマルタ島に移る)。

    感想つづき

    対するはトルコである。物量にものをいわせて攻めてくる。兵の数、10万。一方の聖ヨハネ騎士団はたった600人の騎士。従僕その他を合わせても全部で3000人くらいしかいない。結局、最後に騎士団は負けるのだが、彼らは6ヶ月もの間、10万の大軍を相手に城塞に立てこもりつづける。

    しかし、立てこもった騎士団もすごいが、数千人相手に10万人動員するトルコには驚かされる。人的損害をかえりみないのである。これでは騎士達がいくら精鋭であっても勝てるわけがない。 結局、トルコは5万人の死者を出すが、勝つ。おそるべしトルコのスルタン。おそるべしスレイマン二世である。

    本書では、物語だけでなく、城塞に関する軍事技術的なことにも詳しく触れていて面白い。ちょうどこの時期、大砲の登場によって攻城戦の戦術が変わったので、城塞を大幅に変更しなくてはならなかった。そのために呼び寄せられたイタリア人の築城技術の専門家マルティネンゴがまたかっこよかった。

  375. 「東方の夢 -ボナパルト、エジプトへ征く」 両角良彦 講談社文庫

    1798年から行われたナポレオンのエジプト遠征の話。この遠征は、1800年にナポレオンが途中で部隊を残して帰国し、1801年に残存部隊がイギリス軍に降伏して、失敗に終わる。だが、この遠征には通常の植民地戦争とは違う側面があったらしい。それが、タイトルにもなっている「東方の夢」である。ナポレオンは総裁政府に「エジプトを征服し、イギリスを牽制する」というもっともらしい理由を述べている。が、「東方世界に大帝国を打ち立てる」という漠然とした夢を持っていたという。それは、まさにアレクサンドロス大王が打ち立てた大帝国を再現しようとしたものだった。そして、ボナパルトはエジプト遠征にあたって、ただ征服するだけでなく、東方世界と西方世界の融合をはかろうとした。

    感想つづき

    とまあ、ナポレオンの頭の中にはそういった漠然とした夢があったらしいが、とにかく従軍させられた兵士にしてみれば悲惨な話である。私は、ロゼッタ石とか、スフィンクスの鼻を大砲でふっ飛ばしたとか、そんな逸話くらいしか知らなかったから、お気楽にエジプトに行って帰ってきただけかと思っていた。だが、そんなのんきなものではなかったらしい。飢え、渇き、砂漠の強い日差しによる失明、ペスト。戦闘をやる前からフランス軍は苦しめられた。砂漠の悪環境で苦戦するというのは、第二次世界大戦の北アフリカ戦線を思い起こさせるが、ゴーグルとかサングラス、自動車、無線機のないこの時代もっとひどかったんだと思う。この極限状態で回教徒と戦争をやったもんだから、さらに戦場はひどいものになった。しかも、兵士にとっては何のためにエジプトに来たか分からずに戦っていたという。

    遠征軍が伴って行った「学芸委員会」の話は興味深かった。この「学芸委員会」はエジプトの学問的探求のために、多くの学者、芸術家から編成されていた。要員にはあらゆる分野の専門家や学生から選抜されて、全部で167人(この中には数学者のフーリエなんかも入ってる)。まあ、当時フランスの学問は世界一だったんだろうから、この学芸委員会というのは超一級の学者集団だったんだろう。面白いのはナポレオンがこの文化的事業に情熱を燃やしていたことである。委員会の運営に精力的にも取り組んでいて、エジプトに向かう船上では「小学士院」と名づけた討論会を毎日食後に開かせていたらしい。まあ、このへんがただの軍人ではなかったんだろうな、と思う。しかし、当時の学者というのはあらゆることに手を出していて感心させられる。自分の専門から、物理学者とか数学者の名前にはつい反応してしまうが、フーリエとかラプラスの名前が出てくるたびに「彼らこんなところでもがんばっていたのか」と思ってしまった。

  376. 「Perish Twice」 Robert B. Parker, Berkley Fiction
  377. 「D is for deadbeat」 Sue Grafton, Bantam Books
  378. 「天上の青」 曽野綾子 新潮文庫

    宇野冨士男という行きずりの女を殺して埋める男の物語。はじめは、主人公が曽野綾子の別の小説「夢に殉ず」の主人公天馬翔に似てるなと思った。どちらも、女好きで、口がうまくて嘘つきで、無職。しかも、三浦半島にすんでいる。読み進めていくと、宇野冨士男と天馬翔の違いがはっきりしてくる。天馬翔が相手を幸せにしたいという欲求があるのに対し、宇野冨士男は怒りと破壊衝動に導かれて相手に接する。宇野冨士男は5人の女と1人の小学生を死に追いやり、警察に逮捕される。最後の方は捕まった宇野冨士男と宇野と対照的な人物波多雪子の手紙のやりとりが主になる。宇野の視点から描写されていたときは宇野冨士男の異常さが分かりにくいものだが、手紙になるとどうしようもない人物だということがはっきりする。宇野は結局改心などせずに極刑になる。

  379. 「神の火」高村薫 新潮文庫

    読みかけになってたこの本やっと読み終わった。登場人物たちが、なんか違うんだよな。スパイとして原子力の情報をソ連に流し続けた原子力技術者島田浩二、スパイの元締め江口彰彦、島田の幼なじみで常に暴力のにおいが漂う日野草介、チェルノブイリで被曝したはぐれロシア人高塚良。みんな普通の男を感じさせないんだよ。なんか中性なエロティシズムが漂ってる。特に、この小説の前半は、主人公の島田浩二と日本名を持つロシア人高塚良の純愛小説ではないかと思えてくる。

    強く印象に残ってるのが、大衆中華食堂「王府」。この湯気と油のにおいでいっぱいの大衆食堂がよく描かれてた。思わず、野菜炒めを食いながら、ウォッカを飲みたくなる。瓶ごとお燗にした紹興酒もいい。

  380. 「朝の歓び」宮本輝 講談社文庫

    初めて読んだ宮本輝の本。作者があとがきで書いているようにこの物語は多くのfragmentsからなっている。いちおう、江波良介という主人公がいるわけだが、はっきりした筋や終わりがあるわけではない。登場人物それぞれが持っている人生がこの物語を彩っていく。

    しかし、やはり一番重かったのは、良介にゴルフを教えてくれた82歳の大垣老人である。途中、大垣老人の過去が明らかになる手紙が良介の元に届く。この辺は、夏目漱石の「こころ」を思わせた。しかも、その手紙の中に出てくる人物がKという頭文字で表されているところまで同じである(ただし、この話では女性だが)。とにかく、手紙という小道具の強力さを知った。手紙のところは、何か心を改めて読まなくてはならないような気がしてしまう。

  381. 「遺伝子の不思議」 石館三枝子 新日本新書

    分子生物学の歴史と現状を知りたいと思って読んだ。なんせ断片的な知識しかなかったもんで。しかし、これ読んでて自分の化学の知識のなさを痛感した。まあでも、本質的なことは分かるように書かれています。ちまたによくあるやたらめったら易しい軽い本にはなっていない。

  382. 「神々の流竄」 梅原猛 集英社e文庫
  383. 「陰陽師」夢枕莫 文春ウェブ文庫
  384. 「男のだいどこ」 荻昌弘 文春ウェブ文庫
  385. 「三四郎」夏目漱石 青空文庫
  386. 「Detective」 Arthur Hailey, Berkley Novel
  387. 「原敬と山県有朋」 川田稔 中公新書
  388. 「日本の近代5 政党から軍部へ」 北岡伸一 中央公論社
  389. 「日本の近代1 開国・維新」 松本健一 中央公論社
  390. 「背中の勲章」 吉村昭 新潮文庫

    太平洋戦争における日本の捕虜第1号は真珠湾攻撃において特殊潜行艇に乗っていた酒巻和男少尉であった。そして、捕虜第2号が本書の題材になっている中村末吉一等水兵であった。彼は太平洋上で特設監視艇・長渡丸に乗り組み哨戒任務に就いていた。昭和17年4月18日、日本本土に向かうアメリカ機動部隊をみごと発見するが撃沈され、中村一水以下5名は捕虜となる。本書は、中村一水が捕虜となり終戦後日本に帰還するまでの物語である。ちなみに、長渡丸が発見した機動部隊は初の東京爆撃を成功させた。

    感想つづき

    捕虜となった兵たちは日本が勝つと最後まで信じていた。ミッドウェイ、アッツ島、ガダルカナル、サイパン、沖縄から悲惨な状態の兵が捕虜としてやってくる。新しくやってくる捕虜たちの語る戦場はとてつもなく悲惨なものだった。それでも、その悲惨な兵たちは、口をそろえて「日本は勝つ」と言う。ドイツが負けたことを知っても「日本は勝つ」と言う。「日本は勝つ」、それだけが捕虜たちの支えになっていた。終戦後、昭和21年、秋、捕虜たちは日本に帰還させられる。だが捕虜たちは日本に帰国するまで日本が負けたことを知らなかった。捕虜たちの暴動をおそれてアメリカ側が通知していなかったからだ。帰還する船に乗っていても捕虜たちは行き先を知らない。どこか新しい収容所に連れて行かれると思っている。そして、船上から富士山を見たとき、事態を理解できずに頭を混乱させる。一人の捕虜が「勝ったんだ、勝ったんだよ」と叫ぶ。

  391. 「ゼロの焦点」 松本清張 新潮文庫
  392. 「幽霊船」 白石一郎 新潮文庫

    時代小説の書き手、白石一郎の短編集。十編がおさめられている。短いけど、どれも何か心に残るものがある。それと、西南戦争や九州の大名など九州に題材を取ったものが多く、知らないことなのでそれも面白く読んだ。時代は、戦国から明治までと幅広い。

  393. 「虹の舞台」 陳舜臣 徳間文庫
  394. 「道頓堀川」 宮本輝 角川文庫
  395. 「國語元年」 井上ひさし 新潮文庫

    Raleighであった日本語の古本市で見つけた本。「國語元年」はテレビドラマにもなっていて、中学生の頃見た記憶がある。それで、すぐにピンときて買った。この文庫にはそれ以外の戯曲、「国語事件殺人辞典」と「花子さん」が収録されている。戯曲なので、中身は台詞とト書きである。あとがきによれば、井上ひさしは「国語事件殺人辞典」と「花子さん」は失敗と考えてるらしく、「國語元年」はその失敗をもとに書いたらしい。そういうだけあって、やはり「國語元年」が一番面白く、構成もよく練られている。

    感想つづき

    ときは明治七年、文部省官吏南郷清之輔は「全国統一話し言葉」の制定を命じられるところから始まる。だが、ことはそう簡単には進まない。奉公人その他の10の方言が入り乱れる中、清之輔は七転八倒するという話である。

    ひとつ疑問に思ったのは、本当のところはどうだったのだろうということだ。日本語の標準語というのはどうやって作られたのだろう。南郷清之輔というのは実在の人物で、実際に標準語の制定に関わった人物なのだろうか。そのへんのことが知りたい。

  396. 「砂場の少年」 灰谷健次郎 新潮文庫
  397. 「ハンニバル」 Thomas Harris 高見浩訳 新潮文庫
  398. 「神鳥-イビス-」 篠田節子 集英社文庫
  399. 「山妣(やまはは)」 坂東眞砂子 新潮文庫

    明治末期の越後の雪深い山里を舞台にした伝奇小説。村を訪れた美貌の旅芸人、涼之助。彼には男と女の体を持つという秘密があった。その涼之助と密通する地主の嫁、てる。密通が発覚してから、精神が暴走していくてるの夫、鍵蔵。涼之助に思いを寄せる盲目の瞽女(ごぜ)、琴。そして、山に潜んでいるという山妣(やまんば)。登場人物たちの運命が絡み合っていく。

    感想つづき

    この小説、歴史小説というわけではないので、ストーリーは完全な作り話だし、怪奇的な現象も出てくるのだが、ある種のリアリティのようなものがある。それは、生活の部分である。作者は当時の越後の雪深い山里に住む人々の生活をたんねんに描写する。人々は越後の言葉をしゃべり、東京から来た芸人は標準語をしゃべる。巻末には、参考文献がつけられていることからも作者が事前の調査を相当やったことが分かる。越後の農家、マタギ、鉱山夫、遊女、芸人、瞽女といった人々の生活についての本があげられている。いわば、この本は当時の越後の生活史の再現という側面も持っている。生活がよく描写されてるから、読むとそういった世界を実際に体験したような錯覚に陥る。そして、物語の中で起こる非現実なものも、現実感を帯びてくるから不思議だ。

  400. 「ゴサインタン-神の座-」 篠田節子 双葉文庫

    久々に日本語の小説を読んだ。一気に読み切った。やはり、日本語の本に飢えていたようだ。

    だが、一気に読んでしまった本当の理由は、この小説、話がとんでもない方向に展開していって目が離せなくなるからだ。話は、嫁の来てがない古い大農家の跡取り結木輝和のもとにネパール人女性が嫁いできたところから始まる。そして、現代日本の問題をえぐり出す社会派の小説なのだろうと思って読んでいくとどんどん予想外の方向に進んでいく。

    感想つづき

    主人公、結木輝和は嫁いできたネパール人の妻を「淑子」という日本語名を勝手につけて呼ぶ。輝和は妻という人間も妻が育った文化も全く理解しようとしない。ただ結木家の妻になることだけを強いる。そう、この男は人が理解し合うということの基本的なことが分かっていない。相手を理解しようとしてこそ、相手もこっちのことを理解してくれるというのに。輝和が妻を「淑子」と呼ぶのはその象徴である。たまにそのことを人から指摘されても、なぜ淑子と呼んではいけないのか、と理解できないでいる。そんな彼も淑子の起こす数々の奇跡を目の当たりにして変わっていく。淑子が消えた後、いると思われるネパールの山村へ探索の旅に出たときにはもう全く違う人間になっている。最後に淑子を見つけ、彼女をカルバナ・タミという本名で呼んだとき完全な浄化を果たす。そして、読者もカタルシスを味わう。

    宮崎駿夫の絵本「シュナの旅」というのを思い出した。別にストーリーが似ているというわけではない。でも、読んだ後の感じが似ている。「シュナの旅」はチベットの民話「犬になった王子」というのが下敷きになっていたと思う。そこに漂うアジアの山岳民族の雰囲気が似ていたのだろうか。いや、この小説「ゴサインタン」が、長い放浪の末に、想い人のもとにたどり着くという多くの民話や伝説のパターンを含んでいるからなのだろう。解説で山折哲男氏がメルヘンと評しているが、まさにその言葉がぴったりだ。

  401. 「Airframe」 Michael Crichton

    飛行機事故をテーマにしたクライトンの小説。たいてい、飛行機事故ものとなると飛行機の墜落、大惨事があるが、この小説では問題となる大型旅客機は墜落しない。つまり、事故を起こした機体は手元に残るのである。冒頭、香港からデンバーへ向かっていた大型旅客機TPA454便は飛行中異常事態が発生しロサンゼルスに緊急着陸する。機長曰く「救急車を40台用意してくれ」。

    感想つづき

    主人公は事故を起こした飛行機N-22 Widebodyをつくったノートン社のChasey Singleton。彼女がノートン社の事故調査チームを率いる。機体は手元にある。にもかかわらず事故調査は思うように進まない。肝心の中国人乗務員は緊急着陸後、5分としないうちに香港に帰ってしまう。フライトレコーダーは正常に動作していなかった。ノートン社上層部の陰謀めいた動き。工場労働者との確執。マスコミの介入。事態はどんどんややこしくなっていく。しかもChaseyは一週間で結論を出さなくてはならない。

    この小説、航空業界のことが分かって面白い。この業界かなり複雑である。ある機体が事故を起こしても、ほとんどの場合、設計した会社ではなく、メンテナンスに問題があるらしい。フライトレコーダーも正常に作動していないことが多いらしいが、それも、メンテナンスに問題があるからだそうだ。また、エンジンは設計社が作っているわけではなく、どこのメーカーのエンジンをのせるかは飛行機を買う側が選ぶ(とにかく客のオプションは多いらしい)。だが、メンテナンスに問題があって事故を起こしても、エンジンに欠陥があって事故を起こしてもマスコミの攻撃対象になるのは設計社なのである。

  402. 「無罪」大岡昇平 新潮文庫

    殺人事件の裁判で圧倒的に不利だと思われていた被告が無罪を勝ち取る、その逆に明らかに無実だと思われる者が有罪になってしまう。そんな13の実話がこの本の中で語られる。アメリカ裁判史上の汚点といわれる「サッコ・ヴァンゼッティ事件」を除いて、すべて舞台はイギリスである。大岡昇平によれば「裁判と探偵小説に関する限り、世界で一番進歩しているらしい」国での話だ。

    感想つづき

    13編の中の5編が夫もしくは恋人を殺したとして疑いをかけられた女性の話である。その5人とは、20歳年上の金持ちの夫をクロロフォルムで毒殺したとして訴えられたアデライデ・バートレット(1886年)、若い金持ちの弁護士の夫をアンチモニイで殺したと言われたフロレンス・リカード(1876年)、結婚のためにじゃまになった貧乏な恋人を砒素で毒殺したと訴えられたマドレーヌ・スミス(1857年)、夫殺しの罪をかぶって若い恋人を救おうとしたアルマ・ラトンバーリ(1935年)、そして24歳年上の金持ちの夫を砒素で殺害した容疑をかけられたフロレンス・メイブリック(1889年)である。ラトンバーリ夫人の例を除けば、皆毒殺であり、訴えられた女性はその劇薬を購入していた。これが、いかに不利な状況だったか言うまでもないだろう。

    このうち、メイブリック夫人以外は無罪になった。殺人をやっていないことが立証されたからではない。有罪にするには証拠が不十分だったということである。イギリスは陪審制を採用している。無理に罪人を仕立てて無実の人を殺すより秘密を秘密のままほうむる方を選ぶのがイギリスの陪審員の特性だそうだ。この例を見る限り、イギリスでは陪審制がうまくはたらいている。さらに、人民が全く参加せずに公判が行われるのは、先進国では日本だけだと大岡昇平は付け加えている。

    これらの話は事実であるだけさらに深い。「弁護士ペリー・メイスン」のようなフィクションだと、無実の罪を着せられた被告人も最後には真犯人が見つかり、無罪放免、ハッピーエンドとなるのだが、現実はそうはいかない。まず、真犯人は出てこない。だれが殺人を犯したのか、最後まで謎のまま残る。訴えられた者が本当にやったかどうかは本人以外には分からない。ほんとにやったんじゃないかという気にもさせる。結局、あくまでnot guiltyであって、innocentではない。一度訴えられた者は永久に灰色なのである。実際、訴えられた上の5人の女性はあまり幸福にはなっていない。悲劇的な死を遂げたり、その土地を離れて遠くに移り住んだりしている。ラトンバーリ夫人は裁判後、短刀で胸を六度つき自殺している。自分の存在が子供のためにならないと考えたらしい。

    読んでいて気がついたのは、この本がただの事実の羅列になっていないことである。大岡昇平は事件の中で浮き彫りになった人間性の不思議もまたうまく描写している。そして、訴えられた女性たちに対する優しさも感じた。

  403. 「フィレンツェ」 若桑みどり 文春文庫
  404. 「退屈な殺人者」 森下香枝 文藝春秋
  405. 「アイルランド歴史紀行」 高橋哲雄 ちくま学芸文庫
  406. 「Sphere」 Michael Crichton
  407. 「The Eagle Has Landed」 Jack Higgins
  408. 「Summons」 John Grisham
  409. 「The Civil War」 Bluce Catton, Houghton Mifflin
  410. 「みんなの秘密」 林真理子 講談社文庫
  411. 「こころ」 夏目漱石 青空文庫
  412. 「心に迫るパウロの言葉」 曽野綾子 新潮文庫
  413. 「竜は眠る」 宮部みゆき 新潮文庫
  414. 「タコの丸かじり」 東海林さだお 文春文庫
  415. 「英語達人列伝」 斎藤兆史 中公新書
  416. 「ガリレオの求職活動、ニュートンの家計簿」 佐藤満彦 中公新書
  417. 「道楽科学者列伝」 小山慶太 中公新書
  418. 「昆虫の誕生」 石川良輔 中公新書
  419. 「ヒトラーの震え、毛沢東の摺り足」 小長谷正明 中公新書
  420. 「東京育ちの京都案内」 麻生圭子 文春文庫
  421. 「高橋是清 - 財政家の数奇な生涯」 大島清 中公新書
  422. 「昭和天皇独白録」寺崎英成 マリコ・テラサキ・ミラー 文春文庫
  423. 「日本の貴婦人」稲木紫織 智恵の森文庫
  424. 「開陽丸、北へ - 徳川海軍の興亡」阿部龍太郎 講談社文庫

    アメリカに戻ってくるとき、成田空港の売店で買った。幕末の榎本武揚の艦隊を題材にした小説。幕末、維新史に凝っていたこともあり、また、題材も珍しいので買った。

    感想つづき

    主人公は開陽丸艦長の沢太郎左衛門だが、開陽丸それ自身が主人公でもある。だから、鳥羽伏見の戦い前夜から始まったストーリーは、開陽丸が北海道江差で沈没するところで終わる。五稜郭の戦いも宮古湾でのストーンウォールへ号のアボルテージも描かれない。

    榎本艦隊というのは、幕末維新を題材に取った小説では必ず出てくるが、あまり詳細に語られることはない。特に、船や航海の技術的な細かいことにふれられることはあまりない。そういう意味でこの本は面白かった。例えば、開陽丸は奥州救援に向かう途中暴風雨に遭って舵を失う。この小説から、舵は8畳の大きさの鋼鉄製であり、製造するのが容易でなかったことが分かる。仙台に着いた開陽丸は、やむなく千石船の木製の舵を取り付けることになる。函館に着いてから、船を横倒しにし、6畳の鋼鉄製の舵を取り付けるという荒治療も行っている。これらの修理には同乗していた上田寅吉が活躍している。彼は、1854年、ディアナ号を失ったプチャーチンのために幕府が戸田村で洋船を建造したとき、参加した船大工である。あとには、明治海軍で中心的な建艦技術者となっている。

    人物の描き方には少し不満が残った。沢、榎本があまりに正義漢である。また、沢の許嫁でありながら、沢と結ばれない身に落ちてしまった南雲富子はあまりにやるせなく可哀想すぎる。

  425. 「超ひも理論とはなにか」竹内薫 講談社ブルーバックス
  426. 「目利きのヒミツ」 赤瀬川原平 光文社

    アメリカに戻ってくるときの飛行機の中で読もうと成田の売店で買った本。気軽に読める本なので良かった。難しい本は長時間のフライトの疲れた頭には無理だから。面白かったのは「現代美術と鼻の関係」という章。

  427. 「中性子物理の世界」平川金四郎 講談社ブルーバックス
  428. 「戊辰戦争から西南戦争へ-明治維新を考える」 小島慶三 中公新書
  429. 「明治維新とイギリス商人-トマス・グラバーの生涯」 杉山伸也 岩波新書
  430. 「英国紅茶の話」 出口保夫 PHP文庫
  431. 「ダルタニャンの生涯 - 史実の『三銃士』-」 佐藤賢一 岩波新書
  432. 「戊辰戦争 - 敗者の維新史」 佐々木克 中公新書
  433. 「日本海軍の終戦工作」 纐纈厚 中公新書
  434. 「書のこころ」 榊莫山 NHK出版
  435. 「武士の家計簿」 磯田道史 新潮新書
  436. 「日本陸軍と中国: 「支那通」にみる夢と蹉跌」 戸部良一 筑摩書房
  437. 「火星の虹」ロバート・L・フォワード ハヤカワ文庫
  438. 「覇者の戦塵1943 激闘東太平洋海戦」谷甲州 中公C★NOVELS
  439. 「覇者の戦塵1942 激突シベリア戦線」谷甲州 中公C★NOVELS
  440. 「覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦」谷甲州 中公C★NOVELS
  441. 「覇者の戦塵1942 急進真珠湾の蹉跌」谷甲州 中公C★NOVELS
  442. 「覇者の戦塵1942 撃滅北太平洋航空戦」谷甲州 中公C★NOVELS
  443. 「覇者の戦塵1939 殲滅ノモンハン機動戦」谷甲州 中公C★NOVELS
  444. 「覇者の戦塵1937 黒竜江陸戦隊」谷甲州 角川書店
  445. 「覇者の戦塵1933 謀略熱河戦線」谷甲州 角川書店
  446. 「覇者の戦塵1936 第2次オホーツク海戦」谷甲州 角川書店
  447. 「覇者の戦塵1935 オホーツク海戦」谷甲州 角川書店
  448. 「覇者の戦塵 北満州油田占領」谷甲州 角川書店
  449. 「スペースオペラの書き方」野田昌宏 ハヤカワ文庫
  450. 「楽しい昆虫採集」奥本大三郎、岡田朝雄 草思社
  451. 「「英文法」を疑う」松井力也 講談社現代新書
  452. 「創造する機械」K.エリック ドレクスラー、パーソナルメディア
  453. 「十二戦艦物語」川又千秋 歴史群像新書
  454. 「ミステリーを英語で読むための辞典」青木信義 語学春秋社
  455. 「アモルファスな話」米沢富美子 岩波書店
  456. 「夢に殉ず」曽野綾子 新潮文庫
  457. 「秘祭」石原慎太郎 新潮文庫
  458. 「軌道傭兵」谷甲州 中央公論社
  459. 「司政官」眉村卓 ハヤカワ文庫
  460. 「終わりなき索敵」谷甲州 ハヤカワ文庫
  461. 「最後の戦闘航海」谷甲州 ハヤカワ文庫
  462. 「仮装巡洋艦バシリスク」谷甲州 ハヤカワ文庫
  463. 「惑星CB-8越冬隊」谷甲州 ハヤカワ文庫
  464. 「エリヌス 戒厳令」谷甲州 ハヤカワ文庫
  465. 「タナトス戦闘団」谷甲州 ハヤカワ文庫
  466. 「火星鉄道一九」谷甲州 ハヤカワ文庫
  467. 「星の墓標」谷甲州 ハヤカワ文庫
  468. 「カリスト 開戦前夜」谷甲州 ハヤカワ文庫
  469. 「巡洋艦サラマンダー」谷甲州 ハヤカワ文庫
  470. 「巨人たちの星」ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社
  471. 「ガニメデの優しい巨人」ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社
  472. 「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社
  473. 「カオス― 新しい科学をつくる」ジェイムズ・グリック 新潮文庫
  474. 「マタハリ」マッシモ・グリッランディ 中公文庫
  475. 「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン ハヤカワ文庫
  476. 「ファウンデーションと地球」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  477. 「ファウンデーションの彼方へ」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫

    アシモフの「ファウンデーションシリーズ」の第4巻。この本は1982年に出版されている。3巻の「第二ファウンデーション」が1950年頃に出ているから、実に30年ぶりに書かれたことになる。5巻「ファウンデーションと地球」の頭にあるアシモフのメモ「ファウンデーションの陰の物語」によれば3巻くらい書いたところでこのシリーズには飽きてしまっていたらしい。ところが、このシリーズの人気は衰えを見せず、シリーズ再開の要望がファンから寄せられていたそうだ。そこで書いたのが本書である。30年ぶりに書いたにも関わらず、物語の整合性は失われていない。しかも、アシモフは本書でヒューゴ賞を受賞している。さすがである。

    感想つづき

    物語は全く違う展開を見せる。本書ではもう「セルダン・プラン」はあまり大きな意味を持たない。それよりも人類の記憶から失われてしまった故郷の惑星「地球」が鍵となる。この小説、ただのSFではなく、そこにミステリー、歴史、考古学を加えた独特の雰囲気を持っていてとてもよかった。

    この本では第一ファウンデーションと第二ファウンデーションの両方が描かれている。3巻も第二ファウンデーションが主題ではあったが、主に第一ファウンデーションからの描写しかなかった。本書では、トランターでの第二ファウンデーション員たちの通常の言葉を介さないメンタリクスの会話が描写されている。特に、発言者たちの緊迫した精神のやりとりはとても迫力があった

    しかし、主人公のトレヴィスはファウンデーション員というよりもアメリカ人そのものだなと思う。自由意志、個人というものに異常にこだわる。個人の自由意志が守られるのなら、多少の犯罪、戦争は仕方のない代償として考える。日本人の思考とはだいぶ違う。

  478. 「第二ファウンデーション」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  479. 「ファウンデーション対帝国」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  480. 「ファウンデーション」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  481. 「リングワールドふたたび」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  482. 「無常の月」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  483. 「太陽系辺境空域」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  484. 「地球からの贈り物」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  485. 「プロテクター」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  486. 「プタヴの世界」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫

    ニーブンの未来史<ノウンスペースシリーズ>の中の一冊。舞台は22世紀初頭、海底でイルカ達に発見された像が、実は停滞空間に閉じ込められた異星人だったという話。しかも、この異星人が15億年前全銀河を支配していたスリント人だった。スリント人は強力な精神作用力を持っており、その力で知的生命体をコントロールすることができるのである。そのため、このたった一人のスリント人のために人類文明が危機に瀕する。

    感想つづき

    ニーブンの小説はおしげもなくたくさんのアイデアが詰め込まれているところが好きである。そのアイデアから、もしかしたらそういうこともあるかもなと考えさせられる。ラリイ・グリーンバーグ(たぶん主人公、スリント人のクザノールが主人公とも考えられるが)がテレパシー能力でスリント人の心を読もうとして逆にスリント人に体を乗っ取られてしまう。この理由付けが良かった。グリーンバーグはテレパシー能力があるとはいえ機械の補助が必要なほどその能力は弱い。一方のスリント人は生まれつきテレパシー能力を持っており、何百、何千という知的生命体の心を読んだことがある。テレパシー的な接触でこの両者の記憶が同時に脳の中に入ってきたらどうなるか。脳は自分がテレパシー能力者であることは憶えているので、よりテレパシー経験の多い記憶を使おうとする。そのため人間グリーンバーグはスリント人クザノールの記憶を使って以後行動しようとし、つまりスリント人として振る舞う。この部分を読んだとき、確かにそうかもなと思った。それは、マーヴィン・ミンスキーが著書「心の社会」の中で、自分が自分であると規定しているもの、今の自分が昔の自分と同じだという連続性は、結局のところ脳に蓄積されている記憶に依っているにすぎない、と言っていたことを思い出したからだ。

    話自体は、グリーンバーグがスリント人になってしまったために、単純な異性人VS人間という構図にはなっていない。スリント人だと思い込んでいるグリーンバーグ、覚醒した本物のスリント人、そしてそれを追いかける人間達の三つどもえですすむ。強力な能力を持ったスリント人の前には人間は全く歯が立たないかと言うとそうでもないところが面白い。なぜなら、強力な精神作用力を持っているわりに、スリント人は馬鹿なのである。多くの知的生命体を奴隷として使っていたので、自分で考えることをせず、知性を磨いてこなかったからである。

    ニーブンの小説では多くの異星人が登場するが、これがどれも魅力的である。今回はスリント人の心理描写が良かった。スリント人というのは奴隷とされた種族からすればろくでもない連中なのだが、追憶シーンを読んで内面を知るとちょっとスリント人びいきになってしまう。

  487. 「中性子星」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  488. 「リングワールド」ラリイ・ニーヴン ハヤカワ文庫
  489. 「理科系のための英文作法」杉原厚吉 中公新書
  490. 「鉄砲を捨てた日本人」ノエル・ペリン 中公文庫
  491. 「影武者徳川家康」隆慶一郎 新潮文庫
  492. 「鬼麿斬人剣」隆慶一郎 新潮文庫
  493. 「北の川から」野田知佑 新潮文庫
  494. 「原発はなぜ危険か」田中三彦 岩波新書
  495. 「巡洋艦アルテミス」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  496. 「再び男たちへ」塩野七生 文春文庫
  497. 「男たちへ」塩野七生 文春文庫
  498. 「サイレント・マイノリティ」塩野七生 新潮文庫
  499. 「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生 新潮文庫
  500. 「海の都の物語」塩野七生 新潮文庫
  501. 「ギリシアの神々」曽野綾子 講談社文庫
  502. 「戦国武将伝」白石一郎 文春文庫
  503. 「韓国民主化への道」池明観 岩波新書
  504. 「ハングルの世界」金両基 中公新書
  505. 「新選組血風録」司馬遼太郎 角川文庫
  506. 「アメリカ素描」司馬遼太郎 新潮文庫
  507. 「歴史と視点」司馬遼太郎 新潮文庫
  508. 「燃えよ剣」司馬遼太郎 新潮文庫
  509. 「劇的とは」木下順二 岩波新書
  510. 「アラスカ物語」新田次郎 新潮文庫
  511. 「サイエンス・ナウ」立花隆 朝日新聞社
  512. 「同時代を撃つ 1」立花隆 講談社文庫
  513. 「精神と物質」立花隆、利根川進 文春文庫
  514. 「ぼくはこんな本を読んできた」立花隆 文藝春秋
  515. 「知のソフトウェア」立花隆 講談社現代新書
  516. 「「超」整理法」野口悠紀雄 中公新書
  517. 「青春漂流」立花隆 講談社文庫
  518. 「宇宙からの帰還」立花隆 中公文庫
  519. 「理科系の作文技術」木下是雄 中公新書
  520. 「続日本人の英語」マーク・ピーターセン 岩波新書
  521. 「日本人の英語」マーク・ピーターセン 岩波新書
  522. 「SFはどこまで実現するか」R・L・フォワード 講談社ブルーバックス
  523. 「レッドオクトーバーを追え」トム・クランシー 文春文庫
  524. 「自然界における左と右」マーチン・ガードナー 紀伊國屋書店
  525. 「混沌からの秩序」イリヤ・プリゴジン みすず書房
  526. 「科学革命の構造」トーマス・クーン みすず書房
  527. 「惑星カレスの魔女」ジェームズ・H・シュミッツ 東京創元社
  528. 「アームストロング砲」司馬遼太郎 講談社文庫
  529. 「人斬り以蔵」司馬遼太郎 新潮文庫
  530. 「果心居士の幻術」司馬遼太郎 新潮文庫
  531. 「地球帝国」アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫
  532. 「渇きの海」アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫
  533. 「停滞空間」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  534. 「木星買います」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  535. 「はだかの太陽」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  536. 「鋼鉄都市」アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫
  537. 「2001年宇宙の旅」アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫
  538. 「眼下の敵」D・A・レイトナー 創元推理文庫
  539. 「老人と海」アーネスト・ヘミングウェイ 新潮文庫
  540. 「砂の女」安部公房 新潮文庫
  541. 「壁」安部公房 新潮文庫
  542. 「量子の謎をとく」F. A. ウルフ 講談社ブルーバックス
  543. 「詭弁論理学」野崎昭弘 中公新書
  544. 「知的生活の方法」渡部昇一 講談社現代新書
  545. 「知的生産の技術」梅棹忠夫 岩波新書
  546. 「イギリス海賊史」チャールズ・ジョンソン リブロポート
  547. 「ミス・マープルと13の謎」アガサ・クリスティ 創元推理文庫
  548. 「郷愁」ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫
  549. 「ほんとうの話」曽野綾子 新潮文庫
  550. 「暗号の数理」一松信 講談社ブルーバックス
  551. 「飛行船の再発見」飯沼和正 講談社ブルーバックス
  552. 「椿姫」デュマ・フェス
  553. 「田園交響楽」ジッド 新潮文庫
  554. 「裸のサル」デズモンド・モリス 河出書房
  555. 「ソロモンの指環」コンラート・ローレンツ 早川書房
  556. 「困ります、ファインマンさん」リチャード・P・ファインマン 岩波書店
  557. 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」リチャード・P・ファインマン 岩波書店
  558. 「未公開写真に見る東京裁判」別冊歴史読本
  559. 「戦場の歴史」ジョン・マクドナルド 河出書房
  560. 「世界の戦争3 イスラムの戦争」牟田口義郎 編 講談社
  561. 「世界の戦争4 中国の戦争」駒田信二 編 講談社
  562. 「世界の戦争1 アレクサンダーの戦争」長澤和俊 編 講談社
  563. 「世界の戦争8 アメリカの戦争」猿谷要 編 講談社
  564. 「世界の戦争7 ナボレオンの戦争」志垣嘉夫 編 講談社
  565. 「世界の戦争9 二十世紀の戦争」神谷不二 編 講談社
  566. 「八十日間世界一周」ジュール・ヴェルヌ 創元推理文庫
  567. 「猿の惑星/明日への脱出」ジョージ・A・フィンガー ハヤカワ文庫
  568. 「飛行機の再発見」佐貫亦男 講談社ブルーバックス
  569. 「文章構成法」樺島忠夫 講談社現代新書
  570. 「コナンと髑髏の都」R・E・ハワード 創元推理文庫
  571. 「ラヴクラフト全集2」H. P. ラヴクラフト 創元推理文庫
  572. 「ラヴクラフト全集1」H. P. ラヴクラフト 創元推理文庫
  573. 「魔法の国が消えていく」ラリイ・ニーヴン 創元推理文庫
  574. 「ボンベイ・マリーン出帆せよ」ポータ・ヒル ハヤカワ文庫
  575. 「黒後家蜘蛛の会」アイザック・アシモフ 創元推理文庫
  576. 「青銅の巨砲」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  577. 「駆逐艦キーリング」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  578. 「決戦!バルト海」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫

    ナポレオン戦争時代のイギリスの海軍士官ホレイショ・ホーンブロワーが主人公のこのシリーズは、高校のとき7巻まで読んでいた。買うだけ買って読んでいなかった分をとうとう読み始めた。実に10年ぶりである。さすがに前巻の話が出てくるたびに思い出すのに苦労した。だが、8巻からホーンブロワーの生活レベルが一変してしまっていたことの方がギャップが大きかった。7巻までは、ホーンブロワーは貧乏士官であり、ただパンを黒く焦がして煎じた黒い液体をコーヒーと呼びながら飲んでいた。本当には愛していないマリアと結婚してしまったことにいつも罪悪感を感じていた。しかし、マリアが自殺し、貴族の娘レディ・バーバラと再婚したために8巻からは貴族の仲間入りをしていたのだ。しかも、ただの艦長ではなく船隊司令官になっていた。やはり三部作と呼ばれる5,6,7巻が一番面白かったような。

    感想つづき

    それでもやはり面白かった。まず、舞台になったバルト海がいい。バルト海には多くの国が接しており、この当時の国際情勢を反映して列強の思惑が絡み複雑である。しかも、この当時通信手段が手紙しかないため、本国政府の指示を仰ぐにも時間がかかりすぎる。ためにおのずと派遣された士官は自己判断で動かざるをえないのである。そこに主人公の活躍する余地が生まれる。

    この小説では、爆弾ケッチという艦種が活躍する。爆弾ケッチというのは現代的な砲撃ができたらしい。つまり、大砲を打つ、別の船が着弾観測を行い結果を知らせてくる、火薬の量を調整して打ち直す、という手順を繰り返して精密射撃を行うのである。逆に言うと、こういう大砲の打ち方というのは当時の海戦ではあまり一般的ではなかったのか、ということに改めて気がついた。確かに海戦ではかなりの近距離からお互い打ち合っていたのはそのためか。

    フォレスターの小説というのは食べ物がうまそうによく出てくる。ホーンブロワーシリーズではないが、「駆逐艦キーリング」でクラウス艦長がコーヒーを飲みながらサンドイッチを食っているのが、すごくうまそうに思えたものである。本書でもホーンブロワーはロシアの宮廷に招かれ、はじめて見る料理を食べさせられる。それが、またうまそうに描かれている。特に、「キャビアとウォッカがこんなに合うものだとは知らなかった」とホーンブロワーに絶賛させている。フォレスターもまた食べ物にうるさかったのだろうか、と思ってしまった。

  579. 「勇者の帰還」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  580. 「燃える戦列艦」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  581. 「パナマの死闘」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  582. 「トルコ沖の砲煙」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  583. 「砲艦ホットスパー」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  584. 「スペイン要塞を撃滅せよ」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  585. 「海軍士官候補生」セシル・スコット・フォレスター ハヤカワ文庫
  586. 「ガリバー旅行記」スイフト 新潮文庫
  587. 「ホームズの最後のあいさつ」コナン・ドイル 創元推理文庫
  588. 「バスカヴィル家の犬」コナン・ドイル 創元推理文庫
  589. 「四人の署名」コナン・ドイル 創元推理文庫
  590. 「恐怖の谷」コナン・ドイル 創元推理文庫
  591. 「緋色の研究」コナン・ドイル 創元推理文庫
  592. 「回想のシャーロック・ホームズ」コナン・ドイル 創元推理文庫
  593. 「シャーロック・ホームズの生還」コナン・ドイル 創元推理文庫
  594. 「シャーロック・ホームズの冒険」コナン・ドイル 創元推理文庫
  595. 「西欧文化の条件」井上泰男 講談社現代新書
  596. 「ジュリアス・シーザー」シェークスピア 白水社
  597. 「マクベス」シェークスピア 新潮文庫
  598. 「オセロー」シェークスピア 新潮文庫
  599. 「リア王」シェークスピア 新潮文庫
  600. 「ハムレット」シェークスピア 旺文社文庫
  601. 「アーサー王の死」ちくま文庫
  602. 「数学入門」遠山啓 岩波新書
  603. 「わたしの好きなレコード」ドナルド・キーン 中公文庫
  604. 「からだで知る物理」栗田一良 講談社ブルーバックス
  605. 「物理学はいかに創られたか」アインシュタイン 岩波新書
  606. 「生物が一日一種消えてゆく―滅びの動物学」小原秀雄 講談社ブルーバックス
  607. 「ヒアリング上達法」森戸由久 講談社現代新書
  608. 「西欧文化の条件」井上泰男 講談社現代新書
  609. 「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ 岩波書店
  610. 「モモ」ミヒャエル・エンデ 岩波書店
  611. 「J. R. R. トールキン」ハンフリー・カーペンター 評論社
  612. 「ホビットの冒険」トールキン 岩波書店
  613. 「指輪物語」トールキン 評論社
  614. 「原子核の世界」森田正人 講談社ブルーバックス
  615. 「ウォーゲームハンドブック」ジェ-ムズ・F.ダニガン ホビージャパン
  616. 「量子力学の世界」片山泰久 講談社ブルーバックス
  617. 「相対性理論の世界」ジェームズ・A.コールマン 講談社ブルーバックス
  618. 「白い牙」ジャック・ロンドン 新潮文庫
  619. 「項羽と劉邦」司馬遼太郎 新潮文庫
  620. 「三国志の人物学」守屋洋 PHP文庫
  621. 「三国志の知恵」狩野直禎 講談社現代新書
  622. 「三国志」吉川英治 講談社文庫
  623. 「横井庄一のサバイバル極意書 もっと困れ!」横井庄一 小学館
  624. 「ネズミが地球を征服する?」日高敏隆 筑摩書房